患者さんにゴッドハンド認定されました
ちょっとしたきっかけで人は変わることがあります。鍼がそのための一助になれたのなら、という話です。
しばらく前のことですが遠方から、鼻抜けにお悩みのリコーダー奏者の方がいらっしゃいました。リコーダーは趣味として友だちとアンサンブルを組んで演奏しているとのこと。
わたしは音楽専門を「売り」にしているものの、その人の音楽活動以外の面にも目を向けるよう気をつけています。
たとえば音大を出て演奏を職業にしている人でも、音楽だけしているわけではありません。子どもがいればその親であり、親と同居していればその息子/娘として家庭内で役割があるかも知れません。また家計のために音楽以外のアルバイトをしてるかも知れませんし、カメラや食など趣味に打ち込む人かも知れません。
演奏に関する悩みや不調を訴えていても、音楽以外も含めたその人全体としての悩みや不調がそこに表れているだけです。狭い視野で問題解決を図るともっと大切で根本的な問題を見失う可能性があるのですね。
なのでわたしはその人の音楽活動以外の面も知ろうと努めます。
鼻抜けにお悩みのリコーダー奏者の方は、職場では精密さを要する大切な仕事を預かっていて、家庭では子どもたちの良き親であり、またコロナ禍で困難がありながらも地域の活動をいろいろ盛り上げようという気持ちがおありでした。
こういう方と一緒にアンサンブルを組むのはきっと気持ちの良い人たちに違いない、そんなイメージを持ってわたしは鍼をしました。もちろんこれはわたしの勝手な妄想であり、実際のところは分かりません。そして施術の組み立てやツボの選び方は完全に理論的に行っています。しかしツボも鍼もわたしにとっては道具でしかありません。道具を生かすためにはその人の幸せの形を知っている方が良いような気がする、それだけの話です。
果たして、施術から数週間後に次のようなメッセージが届きました。
夜分にすみません が!今日中にお伝えしたくて!今日、リコーダーのアンサンブルやりました! 結論から言うと、吹けました 一人だけ打ち明けていた友達が1曲吹いたあと「吹けたねぇ!」と満面の笑みで喜んでくれました♪後から聞いたら、吹くまではプレッシャーをかけちゃいけないと、あまり見ないようにしてたそうで そして、練習終わりにメンバーに打ち明けたらみんなも喜んでくれて、最高にハッピーでした やはり、吹き続けるとだんだん力んできてしまって、練習最後の方はちょっと鼻抜けし始めてしまったけど、また吹けるという自信がつきました なかなか楠さんのところに通うという選択は出来ませんが、ゴッドハンドの手にかかりたくなったらまた連絡しますのでよろしくお願いします |
実際には鼻抜けはまだ残っているわけでこの点はこちらで引き取るべき技術的課題としてありますが、メンバーみんなに祝福され、また吹けるという自信がついたところにこの方の帰るべき場所があったように思います。
またはからずも「ゴッドハンド」認定されてしまいましたが、思うにこういう気持ちの良い人たちの心に宿る神が認めるからゴッドハンドなのですね。そんな神に認められるならこれほど嬉しいことはありません。お気持ちをしっかりと受けとめたいと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師