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鼻抜けに悩むクラリネット奏者とのメール相談

" 管楽器奏者の鼻抜け "

2019年1月24日

鼻抜けに困っているクラリネット奏者の方からメールでご相談いただきました。

 

ご本人から許可をいただきましたので、内容を一部抜粋して掲載します。

【相談者】

私は酷い鼻抜けに悩みながら恥ずかしい思いもしながら奮闘してきました。

 

いろいろしましたが解決せず…この度こちらの記事(註 >>扁桃腺(へんとうせん)で起きていた管楽器奏者の鼻抜けを拝見し、脂肪を入れるのがとても気になります。

治りたい治したい一心です。宜しくお願い致します。

 

【くすのき】

脂肪を注射する治療法は、私のところにアレクサンダー・テクニークのレッスンに来ているクラリネットの生徒さんがいくつもの病院を受診してようやくたどり着いた治療法でした。

 

ですが、実際にやるのはこれからなので本当にこれで解決するかはまだ分かりません(一応、生理食塩水注射によるテストは良好な結果だったので期待はしておりますが)。

(註:その後実際に手術して鼻抜けは解消済み)

 

具体的な方法はお腹から脂肪を取って、それを注射器で鼻の奥に注入します。

腹部にメスを入れるので全身麻酔による手術で4日ほど入院が必要とのことでした。

入れた脂肪は次第に体に同化してしまうので、効果の持続期間は3年程度です。

それ以上たつとまた抜けてくるため、同じ治療を繰り返す必要があると思われます。

それとこの方法が効果があるのは、アデノイドという器官が大きく出っ張っていることで軟口蓋がうまく閉じ切らない場合の鼻抜けになります。

それ以外の原因による鼻抜けにどうなのかは分かりません。

 

その上で相談者様の鼻抜けについて、より的確にご助言できることを考えたいのでいくつか質問してもよろしいでしょうか。

(このあと質問項目が続く)

 
(質問への返信が来て再度返信
 

【くすのき】

ご返信ありがとうございます。

また、ご回答もありがとうございます。

詳しくお答えいただいてだいぶ様子をつかむことができました。

 

実際に見ていないので物は試しなのですが、いただいた情報から推測して、2つやってみたら良さそうなことをご提案します。

しばらくやってみていただいて、結果をまたご連絡いただけないでしょうか。

 

1 体を楽にして、膝と股関節を少し曲げた状態で立って吹いてみる。

もし大きな鏡があったら、肩と膝がだいたい一直線上に来るようになっているか確認してみてください(イメージ図を添付しておきます)。

 

結果的には上半身が少し前がかりになるような印象を持つと思います。

これをやって吹く場合とまったくやらないで普段どおり吹く場合で音や吹き心地などが変わるかどうか気をつけながら吹いてみてください。

 

2 (楽器なしで)舌べろをもちあげて上あごの天井の硬いところに近づけておき、その硬いところめがけて息を強く当てるようにして吐く。

クシューとかシーといった強い破擦音が出ます。けっこう疲れるかも知れません。この時にお腹のどのあたりに疲労感があるか、どのあたりを使っているかをよく観察しながらやります。

何回かやったら、今後は楽器を普通に吹いてみます。

やらない時とやった時で、音や吹き心地などが変わるかどうか気をつけながら吹いてみてください。

 

やってみてのお返事をお待ちしております。

 

【相談者】

アイデアをありがとうございます。

膝を曲げる方法は、普段から鼻抜けしそうな時に重心を下げることをイメージしながら、なんとなくしていました。

 

(中略)

 

新たな発見として、風邪をひいている時は抜けにくくなります。鼻奥が腫れていると効果があると分かりました。いつまでも吹いていられることがとても嬉しく、やはり絶対に治したいと思います。

 

まだ問題は解決していませんが、今回興味深いと思ったのは、風邪をひいて鼻の奥が腫れている状態で鼻抜けが起こらなかったことです。

 

単純に考えると普段は少し寸法が足りてない可能性があります。

 

外見上に表れていたり日常会話に支障が出るほど発音が困難な場合は医学的対処が必要なことがすぐ分かりますが、管楽器の鼻抜けの方でそういう人は今まで見たことがありません。

 

メール文中に引用されている、手術で鼻抜けを解消した方は楽器初心者の時から抜けていましたが、会話に支障はまったくありませんでした。

 

言葉は声帯を振動させて話すので、空気の圧がかかるのは声門より手前です。

 

管楽器ではリードの手前まで一定の圧を維持する必要から、話す時よりも口の中の空気の圧が高くないといけないのは想像に難くありません。

 

だとすると、

 

– そもそもの構造に人それぞれ有利不利があって、構造的不利から鼻抜けになるケースがある

 

– その構造的不利は、日常会話で発音に支障がないため医学的には問題とならない

 

– 鼻抜けに悩む管楽器奏者のうちの一定層はこういうグレーゾーンにはまっていて、適切な相談先がない状態に置かれている

 

こんな様子が見えてきます。

 

この相談者の方には、もう一度病院にかかって医学的に可能な対処法がないのかどうか相談してみることをおすすめしました。

 

並行して、奏法的なところでなにかできることがないかこちらでも考えているところです。

 

なお、風邪をひいたら(一時的にせよ)鼻抜けが直るのかどうかは、本当に人それぞれだと思います。

 

別の方で風邪の時にソロの本番で盛大に抜けて、むしろそれをきっかけに鼻抜けが慢性化したケースも知っています。

 

鼻の奥の形状など、個人差の方がけっこう大きいのかなと思います。

この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

カテゴリー: 管楽器奏者の鼻抜け. タグ: , , , , .
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