名称がややこしいディストニア
こんにちは!ハリ弟子です。
ディストニアという病態があります。
ジストニアと言った方が通じるかも知れません。
元の英語のスペルが”Dystonia”なのでディの方が音が近いですが、Generalの意味がゼネラルでもジェネラルでも変わらないように、ジストニアもディストニアも同じことです。
あるいはジストニーとかディストニーと聞いたことがある人もいるかも知れません。
これは元のドイツ語のスペル”Dystonie”から来ています。
言葉の出所が英語かドイツ語かの違いであって、やはりジストニー/ディストニーもジストニア/ディストニアも同じものを指してます。
ディストニアは、「反復性・念転性の持続する一定のパターンをもった筋収縮により特定の姿勢や動作が障害される病態」と定義されています(梶 龍兒 編『ジストニアのすべて』診断と治療社)。
音楽家の間でよく知られているのは、その名もずばりの「音楽家のディストニア(またはミュージシャンズ・ディストニア)」とか「局所性ディストニア(またはフォーカル・ディストニア)」だと思います。
名前が違うのは分類の仕方の違いです。
音楽家のディストニアは、音楽家という職業に関係して発症するのでこの名前がついています。
職業によってはある特定の動きを何度も反復する必要から、ディストニアのリスクが高いものがあります。
音楽家の他にスポーツ選手や美容師などがそうで、これらをひっくるめて職業性ディストニアと呼んだりもします。
また局所性ディストニアは症状が起こるのが全身ではなく体のある特定の一部という意味です。
音楽家の場合、指だけとかアンブシュアや喉だけに症状が発生するのがほとんどなので、音楽家のディストニア=局所性ディストニアと言っても過言ではありません。
症状の出る場所をさらに明示してアンブシュア・ディストニア(または口唇ディストニア)とか喉頭ディストニアなどの名前もありますが、これらも局所性ディストニアの一部です。
さらに「動作特異性(とくいせい)ディストニア」という言葉もあります。
たとえば同じ指を使う動作にしても、楽器演奏の時だけ症状が出て他の動作では何ともないようなことを動作特異性と言います。
「心因性(しんいんせい)ディストニア」という言葉もありますが、これは原因に着目した名前で心理的な要因からディストニアを発症した場合です。
原因が分かっているディストニアは他に遺伝性、薬剤性などがありますが、これら以外のほとんどのディストニアは原因不明です。
心理的、精神的な原因というのは客観的評価やディストニア症状との因果関係の説明が難しく、実は専門家の間でも意見が分かれます。
音楽家が発症するディストニアも基本的には原因不明と考えられているので、このように診断する医師もいるかも知れませんがどちらかというと少数派ではないかと思います。
ということで音楽家が医師にディストニアと診断される場合には、「音楽家のディストニア(またはミュージシャンズ・ディストニア)」、「局所性ディストニア(またはフォーカル・ディストニア)」、「動作特異性ディストニア」といった名前がつくのがほとんどと思います。
しかしディストニア全般では「反復性・念転性の持続する一定のパターンをもった筋収縮により特定の姿勢や動作が障害される病態」をすべて含むので、音楽家がイメージするディストニアとはかなり異なるものもあります。
たとえば遺伝子変異によって体幹がねじれる動きをするような全身性のものもありますし、パーキンソン症候群の症状の1つとしてディストニアが表れることもあります。
そのため音楽家が演奏の動きに不調を感じてもしかしたら?と思って調べる時、「ディストニア」というキーワードだけでは情報が広すぎてかえって混乱するかも知れません。
そんな時にはここであげている「音楽家の~(またはミュージシャンズ~)」、「局所性~(またはフォーカル~)」、「動作特異性~」といったキーワードを加えると、より欲しい情報に近づけると思います。
関連記事
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師