腕がゆれてしまうトランペット奏者とのレッスン
楽器をかまえる時に腕がゆれてしまうトランペット奏者にアレクサンダー・テクニークのレッスンをしました。
マウスピースをアンブシュアに接する瞬間はとても繊細です。
思ったところにカップがおさまらないと吹きたくても吹けません。
そんな感覚は管楽器の人ならよく分かると思います。
アンブシュア・タイプやアンブシュア・モーションで改善できることはたくさんありますが、その前段には思ったところにマウスピースをセットできることがあるのですね。
そんなことに気づかせてくれるレッスンでした。
ちなみにこの方のゆれる原因は不明です。
いろいろ検査もしていて命にかかわるような病気でないことは明らかでした。
しばらく見せてもらってから、楽器を見続けながらかまえることを提案しました。
こちらとしては視覚で対象の動きをモニターしながらの方が思ったところにセットしやすいだろうという意図でした。
ところがこの方が言ってくれたのは「見ることに集中したのでゆれちゃダメだという気持ちをまぎらせることができました」ということ。
「ゆれないように」「ゆれたらダメ」と考えていたのですね。
否定的なアイデアは自分を追い詰めます。
自分にとって大切な失敗できないことほど否定的なアイデアで鍛えようとしがちです。
短期的には結果を生むこともありますが、長い目で見ると弊害が多いように思います。
大切にするほど失敗し、どうでもいいと思うと案外うまく行くというパラドックス。
大切にするってどういうことなんでしょうね。
僕にもよく分かりません。
定義も方法も人それぞれでしょう。
しばらく自分で試行錯誤してからなにかをつかまれたようでした。
どのような思考を獲得されたのか僕には分かりません。
僕の稚拙な提案よりはるか先の次元に行かれたことだけは確かです。
レッスンが終わるころには雲から陽もさしていて天に感謝ですね。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師