このやり方で正しいかどうかが分からない
先日、フォーカル・ディストニアと診断されたピアノ奏者の方とお話ししまして、思うところあったので書いてみます。
ディストニア、、に限らずあらゆる不調やスランプの類を経験すると、自分のやり方でいいのかどうか自信がなくなります。
復調に向けた練習をするにも自分が「正しいやり方でやっているのだろうか?」と気になるご様子でした。
同じ経験をした人のブログ、本を読んだり、先生のアドバイスをもらったとしても、やるのは結局自分なので。
アレクサンダー・テクニークの先生は「正しさ」フォビアが多いので、正しいかどうかで捉えようとする思考そのものを無効化しがちです。
ただここでこの「正しい」というのをもう少し深く考えるとしたら、こういうことだと思うのです。
– 今まで自分のやり方で長年続けてきた結果として現在の不調がある。
– なので、今までのやり方はどこかを変える必要がある。
– しかし自分は自分のやり方しか知らないので、知らないうちに不調と結びついたやり方をしてるのではないかと心配になる。
– だからなにが「正しい」やり方なのか知りたい。
こう読むと「正しい」という言葉は「不調を改善するのに適切なことを自分がやっているだろうか?」というように、ある特定の意味幅に限定されてきます。
さあ、と考えてしまいました。
アレクサンダーの人は動きのプロと言っていながら、この問いに答えられる人がどれだけいるだろうか?
「頭が動いて体全体がついてってればどんなやり方をしてもOKなんですよ」では明らかに幅が広過ぎます。
楽器のことは奏者の方がよく分かっているのでアレクサンダーの人は個々の楽器の奏法を詳しく知る必要はないとも言いますが、ディストニアのような深刻な不調の場合にそれは通用しません。
楽器についても知る必要が出てきます。
この場合であれば、ピアノという楽器の仕組み、音が鳴るという物理現象の原理、人間の体の構造から論理的に考えて、また観察を通じて「正しさ」の幅を見出す必要があります。
白状すると今の僕にはこの幅がまだよく見えていません。
しかしこう問われたこと自体が、アレクサンダーになにが期待されているかを物語っています。
必要とされたことに応えられるよう、今、ピアノという楽器を猛勉強中です。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師