いったん音痴になるのも良いではないか
ジャズ・サックス奏者の川嶋哲郎さんがユッコ・ミラーさんと語るYoutube動画に最近はまっています。
すごくいいことおっしゃるんです、この方。
『(音程が多少悪くても)そこは開き直って、わたしは(音色の)好き嫌いで生きてるので、かんべんしてください(笑)』(1時間2分あたりから視聴してみてください)
どうもサックスという楽器はその形状(テーパー)もあって音程がかなり不安定らしいのですね。
手っ取り早く音程を安定させるには口を締めればいいんだけど、その吹き方で固めちゃうと音色を変えられなくなってしまう。
そうすると音色を良くしたくて口を変えると必然的に音程が悪くなるジレンマから抜け出せなくなる、ということでした。
この話は他の楽器でも当てはまると思います。
仕組みは違いますが、ヴァイオリンなど弦楽器の場合でも。
音色や表現を良くしたいとの要望でアレクサンダー・テクニークのレッスンをすることがよくあります。
レッスンでそのための体の使い方や考え方を提案すると音は良くなります。
そして高確率で音程は悪くなります(笑)
そりゃそうなんです、そうなります。
なぜかというとヴァイオリンでもコントラバスでもフレットのない弦楽器は特にそうですが、音程は自分の指で作るからです。
指の位置とか跳躍の距離感は筋感覚に頼ってますから、アレクサンダー・テクニークで体全体のバランスが変わり腕の位置が変わると今まで養ってきた筋感覚が役に立ちません。
そして次に高確率で起こることは、音痴になった自分の音を聞いてさっとまた元の弾き方に戻すこと。
元に戻せば今までの筋感覚が使えるので音程は良くなります。
でも音は前と同じままです。
ということは今の音程の良さは右手の自由度を殺しているからであって、もっといい音色や表現で弾くためには一回音程をあきらめる必要があるという話になります。
なのでここがふんばりどころです。
新しいやり方で出してみた音がいい音かどうかを、音程よりも優先して聴けるかどうか。
もしいい音だと思ったら、右手がその音を出せることを優先したまま、音程の取れる新しい左手の使い方を模索できるかどうか。
音楽を練習するときの優先度の階層性というんでしょうか?
この場合なら音色 > 音程ということですが、これ意外と、自分でやっててもそうですが間違ってしまうことが多いし、間違って教えられることも多いと思うんです。
サックス以外の人が見ても気づきの多い動画なのでおすすめです。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師