10年越しの不調解決の糸口が見えてきました
弦をはじく際に指を巻き込んでしまう現象に10年来悩まされてきた方がいらっしゃいました。
最近はパソコンのタイピングなど楽器以外の動作でも同じ現象が現れるとのお話しでした。
察しのいい方は分かるとおり指のフォーカル・ディストニアに典型的な症状で、この方は実際そのように診断されていました。
ただこの時はだからどうではなく、何が起きているか現象を虚心に観察することにしました。
問題がない指のはじき方と巻き込みが起こる指のはじき方を何度も見比べました。
ふと思ったのは、はじく動き(指の屈曲)と次の弦に指を運ぶ動き(指の伸展)を同時にやってるかに見えることです。
問題がない指ははじく時に第1~第3関節がすべて屈曲し、はじき終わって次の弦に行く時に主に第3関節から伸展します。
これに対して、巻き込む指ははじく時に第1・第2関節を屈曲し、同時に第3関節を伸展していました。
気をつけたいのは、この動きの組み合わせが絶対的によろしくないものだと早合点することです。
おそらくこのやり方で問題なく演奏してる人も大勢いるでしょう。
この時の僕の視点はそこではなくご本人が「大丈夫なんです」と言っている指との相違でした。
そこからこの方の中では「はじく」ことと「次の弦に指を運ぶ」ことという2種類の動きが元々ありそうだと推測したのです。
「はじいた後、間をとって指を伸ばす意図が十分に明確になってから次の弦に運んでみましょう」
意図する、やる、うまくいく、意図する、やる、巻きこむ(ああ巻き込んだ、と思ってその時起こる感情はスルー)、また意図する、やる、、、
この繰り返しを粘り強くやってくださって、この日の2時間ほどのレッスンを終えました。
1週間ほど経って再度いらした時には前回より速いペースで巻き込みなくはじけるようになっていて驚きました。
もっと速くすると危うくなるとのことでそこは無理せず、自分のペースで家でも続けたそうです。
「10年越しの不調解決の糸口が見えてきました」と言っていただき、こちらの方が救われた思いがしました。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師