レジェンドのアレクサンダー・テクニークは基本に忠実だった
マージョリー・バーストウというアレクサンダー・テクニーク教師がいました。
アメリカの人で1899年生れ、没年は1995年です。
彼女はアレクサンダーが教師養成を本格的に始めたときに第一期生として加わり、一番最初に教える許可を与えられました。
一番最初と言っても1931年に教師養成コースが始まってからのカウントで、実際にはそれ以前からアレクサンダーの仕事を手伝いながら教えられるようになった人が何人かいます。
とは言え勘のいい優秀な生徒だったのでしょう、アメリカではもともとダンスの先生だったそうです。
マージョリーの書いた文章がアレクサンダーの著作“The Use of the Self”の再版本(Centerline Press Edition)に寄せられています。
彼女がアレクサンダー・テクニークをどのようにとらえていたか、また初期の教師養成コースでアレクサンダーがなにを教えていたかうかがい知れる、興味深い部分を抜き出してみました。
まず、”The Use of the Self”の中でアレクサンダーがそのテクニークをどのようにして発展させたかを語った章がありますが、その章をマージョリーが要約して紹介した部分です。
アレクサンダーは自分が思うほどには動作に関する感覚的体験が頼りになっていないことに気づきました。
これに続いてこの章では、本能的な間違った指示(misdirection)が使い方の古い癖と結びついていること、そして、ものごとの道理を考えて導き出した指示(reasoned direction)は古い使い方を排して、新しい動作のパターンに自由とフレキシビリティをもたらすことをアレクサンダーは指摘しています。
こうして、アレクサンダーは使い方と機能の間に密接な関係があることを理解し始めました。
アレクサンダー・テクニークの特徴が分かりやすくまとめられていると思います。
・感覚的体験があてにならないこと
・これまでそうしていたからと無批判・無自覚に今までの方法を繰り返しても上達しないこと
・上達(新しいやり方)のためには、ものごとの道理を踏まえて考え出した方法を意識的にやる必要があること
・使い方と機能の間には密接な関係があること
また彼女がアレクサンダー・テクニークを学んだときのことがこんなふうに書かれています。
始めのうちは日常動作で自分自身を観察し続けるのはチャレンジでした。
さっと(どう歩くか考えることなく)いつもの癖に応じて歩いてしまうことと、その歩き方をどのようにやっているのかを観察することとはまるで別のことでした。
注意深く観察すること、そして動き出す前に十分に考える必要があることを生徒が理解するまで、アレクサンダーは決してゆずりませんでした。
私自身、何度も自問したものです。「なぜいつも正しくあろうとしてしまうのか?正しいってのがどんなことか知りもしないのに。」
“The Use of the Self”では、声枯れの問題を解決するためにアレクサンダー自身が鏡を使って発声の動作を観察した話が出てきます。
教師養成コースで生徒にもそれを課していたのでしょう。
アレクサンダー・テクニークを学ぶ上では、なんというかもう、これに尽きるという感じですね。
・観察する
・どう動くかを十分に考えてから動く
・正しいかどうか?という問いの設定をそもそもから捨てる
生前のマージョリーの動画がYoutubeにありました。
この中で彼女がアレクサンダー・テクニークのことを“his discovery”(アレクサンダーの発見)と呼んだ箇所があります。
「発見」という言葉には、観察と試行錯誤を続ければだれでもが同じものを見つけられるというニュアンスが込められている気がして僕は好きです。
マージョリーによれば、アレクサンダーが”The Use of the Self”を書いたのは自分がたどった道筋を正確に記録として将来の世代に残すことだったそうです。
「わたしがやったことはだれでもできるよ。もしもわたしがやったようにやればね!」
アレクサンダーはこう言っていたと書いています。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師