アレクサンダー・テクニークの人が一番えらそう
こんにちは!ハリ弟子です。
鍼灸学校時代の友達と話していた時のこと。
「3大ボディ・ワークの中でアレクサンダー・テクニークの人が一番えらそうだよね。」
という言葉がその友達から出ました。
彼は合気道の人間でしたが、ボディ・ワーク全般にいろいろ経験していてハリ弟子よりもよほど詳しかったです。
ちなみに、3大ボディ・ワークはフェルデンクライス、ロルフィング、そしてアレクサンダー・テクニークなのだそうです。
ハリ弟子はボディ・ワークのことはよく分からないし経験もないので、これについて論じる資格はないですが、アレクサンダー・テクニークの人がえらそうに見える点についてはちょっと思うところあるので書いてみます。
アレクサンダーさん自身の書いた本を読んでみると、どうも彼は、アレクサンダー・テクニークを使うことで人間という種が次の段階へ進化すると考えていたように感じられます。
19世紀末から20世紀前半のことですから、生物の進化論を人やその社会に応用する考え方は当時としてはそんなに珍しくない、というかむしろ支配的だったと思います。
「野蛮」「未開」「文明」のような人類学の発展段階論や発展段階論的経済学がまともに信じられていて、その先の世界の行く末を考えるのが学問の世界でも普通でした。
なので、アレクサンダーさんの書いたものにそういうテイストが混ざりこんでいても、ハリ弟子は「ああ、時代がかってるな」と思うだけです。
発展段階論は証明された事実ではなくて、歴史に対する1つの解釈です。
アレクサンダーさんは観察された事実や科学的手法に大変こだわった人だと思いますが、その彼も当時の支配的な思考の潮流から自由ではなかったのか、あるいは当時流行の思想に乗って人類の次の発展段階としてアレクサンダー・テクニークを売った方が受けがいいのでそうしたのか、今となっては分かりません。
ただ「アレクサンダー・テクニークの人が一番えらそうだよね。」という感想を聞くと、当時の解釈に基づいたテイストの部分をまともに信じているアレクサンダー・テクニーク教師が現代の世の中にいるのではないかと思えてきます。
人の進化の次の段階、と言葉どおりに考えている人はさすがにいないと思いますが、我々は何か人と違った進んだものを習得していて、これを知らないのは1つ劣った可哀そうな段階にいる人たちだというような選民思想がアレクサンダー・テクニーク教師にあるとしたら、そんなものは害悪でしかないのですぐさまインヒビションすべきです。
経済学における発展段階論はソビエト連邦が崩壊してそれ自体が歴史と化しました。
人類学の発展段階論は「未開」な人たちを教え導くという解釈で植民地政策に利用されたため、植民地独立後は人種差別を正当化する理論として批判を浴びました。
生物の進化論は人間に適用したら優生学に化け、優生学はナチスの人種政策、北欧諸国の強制断種、日本でも障害者の強制不妊手術問題として現在も未解決の人権侵害につながっています。
アレクサンダー・テクニークの基本的原典にこういったものと同種のテイストが含まれているのであれば、教師養成課程はこれを批判的に読むことで乗り越えていく必要があるんじゃないかなあ、、
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師