肩峰(けんぽう)の位置で親指の痛みが消える?
こんにちは!ハリ弟子です。
先日、肩峰(けんぽう)の位置によって呼吸の深さが変わる話を書きました。
それに、アレクサンダー・テクニークのアレクサンダーさんも肩や肩甲骨のポジションに着目していたとの話もありました。
そこで、肩峰の位置を変えることでコントラバスの演奏に何か変化があるかどうか試してみました。
呼吸の時と同じようにあえて前、上方向に持っていかせて弾いてみます。
演奏はまあ、、根本的なうまい下手の問題もあるのであれですが、右手の親指が痛くなることがなくなりました。
以前はしばらく弾いていると親指の付け根の関節、ツボでいうと肺経の魚際(ぎょさい)あたりが痛くなったのですが、それがありません。
おもしろいのは、肩峰を前の方に持って来ると肩甲骨の烏口突起が突き出して触りやすくなるのですが、その烏口突起のあたりから経絡の肺経が始まることです。
肩峰を前に動かすことで烏口突起、つまり肺経の始まりである中府(ちゅうふ)、雲門(うんもん)といったツボがあるところがゆるみ、魚際の痛みが消えたことになります。
これを鍼灸で治す場合、中府、雲門も選択肢になるでしょうが、力学的表裏の関係を考えると肩甲骨と脊椎の間のエリアの方がより重要と考えています。
肩峰を前、上方向に持っていくことで親指付け根の痛みが消えたということは、この痛みは肩峰が逆方向に引かれていたことによるものとの推測が成り立ちます。
魚際は手の平側なので、その逆方向は手の甲側になります。
手の甲側をずっとたどると肩甲骨そして背中につながります。
それゆえに肩甲骨と脊椎の間のエリアで過剰に肩甲骨を引っ張るものがいて、無意識にその状態が続いてしまってる可能性が高い、ではその引っ張るものを解除すれば良いと考えるわけです。
ただし、ここで手の甲側を走る経絡である大腸経、三焦経、小腸経だけを考えるとちょっと役不足な気がします。
というのも、これら3つの経絡だけで肩甲骨と脊椎の間にあるツボをとると三焦経の天髎(てんりょう)、小腸経の肩外兪(けんがいゆ)、肩中兪(けんちゅうゆ)だけになってしまうからです。
これらはいずれも肩甲骨上部と頚椎や胸椎上部との関係性しか持ちません。
実際の筋骨格系の構造、動きとの関係を観察するなら、たとえば広背筋を経由しての腰背腱膜とのつながりもあるので、骨盤や下部脊椎と肩甲骨との関係も考える必要があります。
ここまで推理を的中させ、背中のツボ一発で親指の痛みを取れたらかっこいいのですが、現実はそう甘いものではなく何しろ探索エリアが広いので狙うべきツボを探すのが大変です。
もちろん触診して当たりをつけながら1つ1つ試すわけですが、1回の治療でそんなにたくさん試すわけにもいかず、、
そんな時にはアレクサンダー・テクニークの教師養成課程で副産物的に身についた「手」を使って、動きをスムーズにしてしまって痛みを軽くすることをはかります。
でも、内心ちょっと悔しい気持ちです。
鍼灸師的にはツボが外れた悔しさ、アレクサンダー・テクニーク教師的には「手」を目的外使用した複雑な感じでしょうか、、
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師