朗読の方の喉の調整
こんにちは!ハリ弟子です。
七十二候の「北風、木の葉を払う」の言葉どおり、冷え込みが厳しく、風が強くなってきました。
いらしたお客さまは、朗読をされる方で、喉をいためてしまい声が出なくなってしまったとのこと。
そしてなんと朗読の本番が3日後にひかえているという状況でした。
さらに、鍼は苦手なので他の方法で何とかできればというご希望がありました。
一応、bodytuneは鍼灸マッサージ院なので、マッサージもできますがメインは鍼灸です。
なので、こういう方がいらっしゃるのは大変珍しい、というかほとんど初めてで面食らったのですが、逆に鍼以外のスキルを磨くチャンスをいただけている、と思い直しました。
この時、ハリ弟子の頭にあったのは仮免実習中のアレクサンダー・テクニークでした。
アレクサンダー・テクニークにも、テーブル・ワークといって、あおむけに寝た状態で行う施術のようなものがあります。
その方がもともと持っている関節のアラインメントに従って、先生が手で持って身体を動かしていくので、はたからはすごくソフトな整体に見えます。
そもそも、アレクサンダー・テクニークは、100年ほど前に、原因不明の声がれで俳優キャリアの危機にあったF.M.アレクサンダーが声を取り戻すために発見したものです。
喉や呼吸のトラブルを解決するものとして発展してきた歴史があります。
だから、今回はドンピシャなお客さまなわけです。
こうして、鍼抜きでの施術が始まりました。
まず、お腹と背中からお灸でしっかりと熱を入れて、身体が自ら治ろうとする働きに援軍を送ります。
それから、テーブル・ワークを開始します。
患者さんの指先からとても繊細に動かしていって、肘、肩、肩甲骨、鎖骨と緊張のないリラックスした状態にします。
同様に、足、背骨、首、頭と基本的には全身にアプローチします(この時は時間の関係上、首と頭を中心に働きかけました)。
押したり揉んだりは一切しません。
テーブル・ワークで一番重要なのは、術者の思考です。
施術する側のハリ弟子が意図と願いをもって、指先を含めて身体全体から上がってくる感覚にオープンであり続けて、自分の思考と身体の使い方に気をつけて相手の身体を動かすことで、そのような心身のありように相手をお誘いするのがテーブル・ワークです。
わけが分かりませんね、、
でも、先日のブログ記事触れることの効能を思い出してみてください。
感覚刺激は意識に届く前にすでに意識下の自律的なシステムに働きかけていました。
視覚や指先の触れた感覚などすべての刺激に対してオープンでさえいれば、後は自分の自律的なシステムが勝手に処理してくれます。
術者のやることは、何の願いのためにそれを使うのか方向づけすることと、自分の自律的なシステムが完璧にうまく働いているのを邪魔しないことだけです。
東洋医学的に表現すると、五臓六腑に任せると言えばいいでしょうか。
意識下のシステムも含めての全体をもって患者さんに触れると、患者さんの意識下にある自律的なシステムも応えてくれるような気がします。
今回はとりわけ、喉周りについてていねいに、時間をかけて触れていきました。
我々はもろくて壊れそうなものを優しくていねいに扱います。
今の患者さんの喉は傷ついて壊れやすく、繊細に扱う必要があります。
そうした意図をもって触れながら、患者さんのシステムもそれに同意して喉を大切に扱ってくれるようにとお願いします。
ここの思考は本当に誠実に行う必要があります。
ウソがあると、自分の五臓六腑にも患者さんの五臓六腑にもいいことは1つもありません。
うまく行くと、後は患者さんのシステムが自ら治る方向に完璧にうまく働いてくれます。
しかし、朗読の本番は3日後、、いかんせん時間がありません。
本番までに朗読に耐えうるまでに回復するかどうか、こればかりは結果を先取りしてのお約束はできません。
でも、後悔しないために今できることとして、誠心誠意でテーブル・ワークをさせていただきました。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師