声の不調と舌骨・喉頭の位置関係
こんにちは!ハリ弟子です。
息の通り道について舌骨と喉頭の位置関係からアプローチした論文をご紹介します。
>>Soren Lowell, “Position of the Hyoid and Larynx in People With Muscle Tension Dysphonia”
訳すと『筋緊張性発声障害における舌骨と喉頭のポジション』です。
この研究では、筋緊張性発声障害(Muscle Tension Dysphonia)の患者と健常者で安静時と発声時の舌骨・喉頭の位置や動きに違いがあるか、エックス線画像を使って比較しました。
ものすごくはしょって結果をまとめると以下のとおりです。
患者群
舌骨 安静時も発声時も高い位置にある(いずれの時も健常者よりもかなり高い位置)
喉頭 発声時に約1㎝上がる
健常者群
舌骨 安静時よりも発声時の方が低くなる
喉頭 発声時に約2㎜上がる
ここから先はハリ弟子の感想です。
患者群では舌骨がいつも高い位置にあることから、舌骨上筋群が常に緊張状態にあることが推測されます。
健常者群が発声時に舌骨を下げて喉頭も少し上げることで両者を近づけているのに対し、患者群では喉頭だけをかなり持ち上げることで両者を近づけようとしています。
結果として同じ位置関係になることを目指しているように見えますが、やっていることは違います。
患者群では舌骨が高い位置にとどまり続けそこに喉頭を寄せるので、頚椎の前面と下顎骨に囲まれた狭いエリアにより多くのものを詰め込む結果になります。
先日来確認してきた舌根の後ろのスペースがつぶれてせまくなると思うのはハリ弟子だけでしょうか。
発声障害の患者さんの場合には、この喉頭の位置関係や筋緊張が声帯に悪影響を与え、声がかすれたり出なくなったりするのでしょう。
しかし、この同じ状態が管楽器奏者の場合には息の通り道をつぶすことにつながり、鼻抜けや場合によってはアンブシュアの不調などにも関わってくるかも知れない、と思いました。
仮にこれが舌骨に関わる筋群の緊張癖に原因があるとすれば、鍼灸でその筋肉をゆるめることで改善する可能性があります(ただし場所が場所ですし、細い小さな筋肉が多いので安全にねらえる筋は限られるかも知れません)。
アレクサンダー・テクニークでも、緊張をなくしつつ動作を改善するようにレッスンで学んでいくので、こういった状態の方には効果が期待できます。
この場合であれば、普段から上げっぱなしになっている舌骨を下げられるような姿勢の取り方、体の動かし方、喉の力の入れ方(抜き方)などをレッスンすることになるでしょう。
効果の有無やどのくらいの期間必要かは個人差があるので一概には言えませんが、純粋にやり方や機能、それらにまつわる本人の思い込みの問題である場合にはかなりのわりあいで改善を期待してよいかと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師