吹奏楽の管楽器と肩こり・首こりの関係
こんにちは!ハリ弟子です。
吹奏楽で使われる管楽器を吹いていて、肩や首がこらない人はいないのではないか?と思うくらい多くの人が肩や首のこりや痛みで治療にいらっしゃいます。
もっとも、治療に来るレベルの人は、肩こり・首こりは常時あるのが当たり前で、さらに頭痛や顎関節症などが加わることで「これは何とかしなければ」となって治療院に来ます。
そのため、治療の一義的なターゲットは頭痛や顎関節症なのですが、発症のメカニズム的には肩こり・首こりが先があって、それが悪化することで頭痛や顎関節症を招いたと思われるケースがほとんどですから、治療の中身は結局、肩こり・首こりに対するものになります。
つまり、肩こり・首こりが軽めのうちに対処していくことが、より深刻なケガや不調を回避して健康的な演奏生活を維持するための鍵と考えられるのです。
ハリ弟子も以前Tubaを吹いていた頃、肩こり・首こりがあるのが基本仕様でした。
今、解剖学やアレクサンダー・テクニークを学んでから思い返すと、いろいろと思い当たります。
まず、息を吸うべきタイミングで、息を吐くための筋肉が働いたままになっている、あるいはその逆。
また、楽器を持つための腕の動きと胸郭の動きがうまくマッチしていない、といったことです。
この動画のように、息を吸う時には基本的に肋骨と胸骨は上に上がり、息を吐く時には下に下がります。
息を吸うタイミングで息を吐くための筋肉が働いていたら何が起こるでしょう?
息を吐くための筋肉は主として腹筋です。
腹筋が働いて固くなっていると横隔膜が下がることができず、息を十分に吸えません。
そうすると、胸郭の上の部分を過剰に持ち上げることで息を吸うしかありません。
これをやる筋肉は、首の骨から第1~第2肋骨に着く斜角筋や耳の下辺りから胸骨に向かう胸鎖乳突筋です。
これは首がこるわけです!
この逆、息を吐くべきタイミングで息を吸うための筋肉が働いていたらどうでしょうか?
「呼気時の吸気的傾向」という言葉があるように、状況によってはこれはスキルとして意図的にやることもあります。
たっぷりと息を吸って、長いフレーズを切れ目なく一息で吹きたい時などです。
ハリ弟子も昔、ホルストの「第1組曲」冒頭のTubaを一息で吹きたくて頑張ってやっていたことがあります(理由はブレスが下手だったから、、)。
しかし、明確に意識してやらないと、息を吐くための筋肉と吸うための筋肉が同じ場所でかち合ってしまいます。
かち合った状態でなおかつ胸郭の上の部分を持ち上げておくために、先ほどの斜角筋や胸鎖乳突筋が過剰に働きます。
さらに肩甲骨・腕と肋骨をつなぐ大胸筋や小胸筋が加勢し始めて、腕の方向に肋骨を引き付けておくことで息の量をキープしようとするでしょう。
そうすると、肩甲骨を上の方に維持しておくために僧帽筋の上の部分も余計に頑張る必要が出てきます。
僧帽筋の上の部分は後頭部や首の後ろから肩甲骨に着いています。
これでは、肩や背中にかけてひどいこりを生じるわけです。
また、楽器を構えるために「脇をしめる」という言葉がありますが、これを意識し過ぎて、腕を脇の位置に固定してしまうと、肋骨の動きまで制限して、呼吸には逆効果となります。
特に肋骨の肘と同じくらいの高さのところは、最もダイナミックに動ける部分でもあるので、そこの動きを制限されると、やはり胸郭の上の部分で余計に頑張らなければならなくなり、肩こり・首こりの原因になります。
あるいは、息を吐く時に下後鋸筋といったマイナーな筋肉まで動員せざるを得なくなり、背中の下の方まで痛みが出るかも知れません。
動物としての人間の呼吸の機能は、一義的には、血液中の酸素と二酸化炭素の濃度を調節するためのものです。
それを無視して、音を鳴らすために息の出し入れを調節するというのは、それ自体かなり高度なスキルであり、意識的な身体の操作を必要とします。
なってしまった肩こり・首こりを即効的に取り去るには鍼灸が役立ちますし、肩こり・首こりになりにくい演奏のための動きを身につけるにはアレクサンダー・テクニークがとても有効です。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師