日常生活では問題ないが軟口蓋が人より短かった鼻抜けの事例
管楽器奏者の鼻抜けに関して、以前より鼻咽腔閉鎖不全とそうではない状態の間にグレーゾーンがあって多くの鼻抜けに悩む奏者はこのグレーな部分に入るのではないかと書いてきました。
鼻咽腔閉鎖不全は外見上明らかな特徴がなければ、普通は第三者にとって言葉が聞き取りづらいなどの状況があって初めて気がつきます。
でも鼻抜けに悩む管楽器奏者で発音が聞き取りづらい人は僕は今まで会ったことがありません。
なので、医学的に治療が必要となるレベルの「鼻咽腔閉鎖不全」と「健常」の間に位置する鼻抜けの奏者がけっこういるのではないかと考えたわけです。
話し言葉が聞きづらい > 管楽器奏者の鼻抜け > 異常なし
先日、メールで鼻抜けの相談をしていた方から、日常生活には問題ないが特定の発音で少し息が漏れていて、軟口蓋が生まれつき人より短めなことが内視鏡検査で分かった、とご連絡いただきました。
まさにグレーゾーンの事例です。
この方の場合、常に必ず抜けるわけではありません。
しかし検査で確認できた以上、軟口蓋のサイズ・形状が影響して鼻抜けになっていた疑いがあるわけです。
このことが示唆するのは、そもそも生まれつきにより軟口蓋をずっと閉じておくのに不利な人がいるということです。
ということは、それを努力ややり方の点だけで何とかしろと言ったらちょっと乱暴ですね。
音域、音量、演奏時間など抜ける状況が人それぞれで外見では分からないので、本人を責めてしまいやすいですが、そもそも不利であればそれに応じた対策が必要です。
医療的に解決が可能ならそれも1つだし、不利であることを前提とした奏法上の工夫もあるでしょう。
加えて、アシスタント奏者をつけて役割を分担することも人数がいれば可能です。
アシスタント奏者はプロの公演でも普通にやっていますし、ワグナーの長い作品など前半と後半で金管奏者を入れ替えることもあると聞くので決して妥協ではありません。
また指導者の視点からは、休憩の取り方やリハーサルの曲順などで工夫できることもあると思います。
鼻抜けの問題は、根性とか、とにかく負荷をかけて鍛えるという発想に行く前に、どうも生まれつき一定の有利・不利があるらしいと知っておいた方が良さそうです。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師