しっくりくる感じの正体
今日、フェイスブックの友人がシェアしたのを見て興味ひかれたのがこれ。
「一次体性感覚野が、運動についての事前情報を受け取っていることを発見」
手を動かす時、動かした手の感覚を脳の感覚をつかさどる部分(感覚野)が感じますがこれは当たり前です。
実は感覚野は、動く前に脳の運動をつかさどる部分(運動野)から筋収縮に関する情報を受け取っているというのがこの論文の明らかにしたところです。
さらにすごいのはこの部分。
「一次運動野は、手足の動きに先立って活動し、その後に生じる筋収縮に関連した情報を持っています。(中略)その結果、一次体性感覚野も筋収縮に関する情報を、筋肉が活動し始める前から持っていることが明らかとなりました。一次体性感覚野は一次運動野より少し遅れて筋収縮の情報を持ち始めることから、一次運動野から一次体性感覚野に筋収縮についての情報が伝わってきていることが推察されます。」
運動野は自分が出した運動の指示の結果どんな筋収縮が起こるか情報を持っているらしいのです。
おそらくこれは過去の運動の経験から蓄積された情報だと思われます。
で、この過去データを実際に運動が起こるより前に感覚野とシェアしていると。
そして運動が始まってからは感覚野は、体から上がってくる実際の感覚情報と運動野からの過去データが合わさった波形を作ります。
これは大変興味深いことで、感覚野としてはどこまでが運動野からシェアされた過去データでどこからが体から今上がってきている情報か区別つかないでしょうから、全部一緒になったものとして「今、感じている」と処理すると思われます。
だとすると、我々は体を動かした時に過去と現在が混ざり合ったものを体験することになります。
アレクサンダー・テクニークのレッスンでは「違和感がある」「しっくりこない」感じがする時、むしろそれを奨励します。
やりたいことがうまく行かないのは今までのやり方に何か邪魔してるところがあるからで、うまく行きたかったら今までと違うやり方を試す必要があります。
違うやり方は今までやったことがないわけだから「違和感がある」「しっくりこない」のが当たり前で、だからこそ、こう思った時は違うやり方をできたということになります。
音でもブレスでも何でも欲しい結果に近づけているかどうかの評価はその次にやることです。
– 過去の体験と結びついた感覚認識をあてにしてはならない –
そんなことが脳科学的にも示唆されるような、そんな興味深い研究でした。
研究を紹介する記事の原文はこちらから読めます。
>>「一次体性感覚野が、運動についての事前情報を受け取っていることを発見」
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師