手のツボとアンブシュアの不調
続くときは続くもので、昨日、今日とアンブシュアにお悩みの方がいらっしゃいました。
昨日はトロンボーンの方。
お悩みの内容は長い音をのばすときのアンブシュアまわりの震えでした。
タンギングやアンブシュア関連の主訴に対して、最近、僕が試しているツボが手にあります。
以前から、タンギング不調の方や顎関節症の奏者にも使ったこともあります。
自分に刺してどんな変化が起こるか観察してみると、首まわりの筋肉がゆるむだけでなく、喉から鼻の奥あたりまでゆるやかに状態が変わります(もちろん個人差があります)。
そこでこのトロンボーン奏者の方にも使ってみました。
まず左手に鍼をして吹いてもらうと唇の左側の震えが消えました。
次に右手に鍼をして吹いてもらったら今度は右側の震えが消えました。
んなアホなという感じですが、たまたまにせよ本当です。
ただこの方の場合、音がやせてしまったので必要な力の一部をそこに頼っていたと推測して、それ以上は口まわりに影響の出るツボは避けました。
そのかわり呼吸に関係あるツボを選び、アレクサンダー・テクニークも使って、抜けたパワーを吐く息の力で補うようにしました。
一方、今日いらしたのはホルン奏者の方。
お悩みの内容も吹いているときのアンブシュアまわりの震えで共通していました。
鍼をする前に吹いてもらいましたが、見た目にはほとんど震えが認められません。
それでも触診するとやはり首まわりに硬さがあるので、同じ手のツボを使いました。
その直後に吹いてもらったところ、今度は逆に震えがひどくなりました。
幸い自分でコントロールできる程度のものだったので、フレーズを吹き終わるころには元どおりにおさまっていましたが、、
いずれの例も手のツボを使うことでアンブシュアまわりの張力を変化させたと推測します。
2人目のホルン奏者の方は、張力をいい具合におさめるべきところが効きすぎて想定以上にゆるんでしまったと考えられます。
このあたりは症状の程度に応じて要調整ということが分かりました。
この方も呼吸に関係するツボで吐く息のパワーを補いました。
そのあとで吹いてもらったら、今度は音が豊かに鳴るようになってびっくり!
本人も「ストレスなく息が吐けて音になった」とおっしゃっていました。
アンブシュアに関しては、息を吐く力と対になったアンブシュアを閉じる力、マウスピースのプレスと対になった頭をマウスピースに押し返す力、それら力の拮抗の中にあってなおかつ自由に舌を動かせるような首まわりの張力バランス、といくつものパラメータが複雑に絡みあっています。
鍼でどこまで調整できるものか、未知の分野ですが大変興味深く施術させていただいてます。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師