「使う」という言葉の使い方
こんにちは!ハリ弟子です。
レッスンなどで「もっと背中を使って」とか「〇〇筋を使って」と言うことがあります。
この時の「使う」という言葉の本当の意味を伝えるのは、実は意外と難しいような気がします。
例えば「広背筋を使う」と言った場合、
A 広背筋を収縮させる
B 広背筋を伸ばす
どちらも感覚的にはしっくりくることがありえます。
筋肉の役割自体は収縮することですが、筋肉の両端にある腱は伸ばされた時に感覚を生じます。
真ん中にある筋肉が収縮すると両端の腱は伸ばされますので、この時の感覚をもって「使う」と言った場合には、Aが「使う」の意味になります。
また、筋肉自体も伸ばされた時に感覚を生じるので、この時の感覚をもって「使う」と言うと、Bがその意味になります。
しかし、実際にやっていることは真逆です。
また、同じ筋肉の中でどの部分を収縮させるかによっても動きが変わってきます。
脊柱起立筋のように長い筋肉は、起始部や停止部が1か所ではなく、いくつかの骨にまたがっています。
同じ脊柱起立筋の中のどこを収縮させるかで、腰椎部分に働きかけるのか、肋骨部分(あるいは胸椎)に働きかけるのかが変わります。
このような場合に「脊柱起立筋を使って」ではざっくり過ぎるのです。
かといって、細かく言い分けたとしても、微細な身体操作を得意とするヨガやダンスの人ならいざ知らず、なかなか意図が伝わらないでしょう。
特に体幹の動きについては、そのような気がします。
身体に与えている指示言語は本当に人それぞれです。
一応、世界共通で用語が整備されている解剖学に基づいて会話をしようという流れではあるものの、やりきれないことは明らかですし、効果を保証するものでもありません。
なぜなら、身体への指示は、正しい正しくないという問題ではなく、その人の身体がうまく動いてくれるのであれば、それがその人にとっての正解だからです。
ともすると、先生から一方的に「もっと〇〇を使って」と言ってそれっきりになってしまいがちですが、その言葉が相手の身体の中でどう翻訳されているか、その結果が望ましいものになっているのか、いないならその人にとってより役に立つ指示言語は何か、人それぞれのずれに自覚的でありたいと思います。
「使う」の意味内容についての共通理解を育てるコミュニケーションがあるような、そんなレッスンをハリ弟子も心がけたいと思っています。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師