ナンシーのコントラバス・レッスン
こんにちは!ハリ弟子です。
アレクサンダー・テクニークの学校Body Chanceに、今、ナンシーという先生が来ています。
ナンシーはアメリカでアレクサンダー・テクニークを教えていて、また、フェルデンクライス・メソードの先生でもあります。モーシェ・フェルデンクライスから直接教わった最後の世代の1人だそうです。指導歴40年以上のベテランです。
ハリ弟子は、左手の小指に悩みを抱えていました。
いつもではないですが、時々、こんなふうに指が折れてしまいます。
一度この状態になると解除するのが難しく、小指がからむ運指はほぼ使いものになりません。
ナンシーはハリ弟子の手をおおうように触れて、こう言いました。
・・・人差し指と中指はとても強く神経とつながっていて、薬指と小指はつながりがあまりないわねえ。
こういう人もいるんですね。触れるとこういうことが分かるそうです。
「つながっていて」というのは、文字どおりの神経筋接合の話ではなく、下向性の運動神経が与える指示の明確さ、正確さのことだと思います。
ナンシーからは、非常に注意深く意識的に左手の薬指と小指を使うことをアドバイスされました。日常生活では薬指や小指の巧緻動作はあまり必要ないけど、楽器演奏のような特殊な動きのためにはもっと高いレベルで精密な使い方ができる必要があるとも。
いろいろ思い当たることがあります。
ハリ弟子はもともとTubaを吹いていて、コントラバスを始めたのは30代も後半だったこと。
コントラバスを始めた当初、小指がからむ運指で弦を横に引っ張ってしまいよく注意されたこと。
引っ張ってしまうのは、力が入るとわしづかみになっていたからでした。当時は、小指の使い方としてわしづかみくらいしか知らなかったので。これを防止するために小指の力を抜く癖がつき、回外の動きで押弦に必要な力を補っていたのかも知れません。そう考えると前回の記事と話がつながってきます。
でも、始めてから10年近く経った今なら、詳細な指示を与えながら適切に力を使えるかも知れません。
小指の腹のどこで弦に触れるのか、小指のどこから曲げるのか、押弦と言うけれどもどのくらい「押す」のか(他に小指を延ばす、曲げる、延ばしてから曲げるなどの指示も試してみます)、それらをどのタイミングで行うのか、、、
全身を映せる鏡があると自分が指示したことと実際にやってることの違いも見えたりします。
こういうことを、左手の甲や肘で何をしているか、わきの下で何をしているか、左側の背中~腰にかけて何をしているか、股関節・膝・足首~足裏で何をしているか、それら全部と頭~首~胴体の関係性はどうか、にも意を払いながらバリエーションを変えて実験です。
楽音を作るための「練習」ではないので音にはこだわらず、やったことと結果の対応について経験を増やしていくことが大切です。
経験を増やす意味で、楽器から離れた生活上の動作でも積極的に小指を使ってみました。
重たいものを小指で持つのは痛めるリスクもあるので、とりあえず軽いもので。鍵を回す時、電気のスイッチ、コップを取りに行く、小さなものをつまむ、、、けっこうありますね。
もどかしいですが、速くうまくやるのが目的ではなく、どのくらい明確に強く指示を出していくかが問題です。あくまでも、アレクサンダー・テクニークを使った下向性運動神経の訓練ですから。
そんなことを数日程やってからコントラバスを弾いてみたところ、、、
なんと音程が良くなりました!
特に小指を使っての2番線のFis、3番線のCis、4番線のG、Gis辺りは苦手だったのですが、かなり精度が上がりました。
気になる指折れも、ポジションによってはまだ起こりますが、前よりも頻度が減っています。何よりも、どのように手を動かすという指示のイメージを明確にしていると、指が折れる手の使い方から離れることができ、再現性もあるという確信があります。練習の手応えも変わってきます。
見てもらったのはそんなに長い時間ではないですが、新しい方向性を示してくれるレッスンでした。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師
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