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bodytune(ボディチューン)音楽家のための鍼灸

鍼灸師とアレクサンダー・テクニークを語る(1)

" アレクサンダー・テクニーク "

2020年1月10日

1月5日(日)のアレクサンダー・テクニーク江古田レッスン会に群馬から岡本悠馬さんが来てくれました。

 

岡本さんは整動鍼発祥の鍼灸院、養気院の副院長です。

 

「そもそもアレクサンダー・テクニークって何なん?」

 

という素朴な疑問から遠路、東京までギター片手にいらしてくれました。

 

ありがたいことです。

 

時に核心を突く彼の質問の数々にがんばって答えてみました。

 

さっそく行ってみましょう。

アレクサンダー・テクニークってそもそも何なん?

名前にもあるとおりアレクサンダーさんという人が100年くらい前に始めたものですが、歴史とかはウィキペディアにゆずるとして・・・

 

一言で言ってしまうと「頭が胴体から離れる方向で動き続けられるように体を使うこと、またそのように体を使えるための思考のコントロールも含む一連のスキル」です。

 

要は体をぎゅっと固めたり押し縮めたりする癖を手放せたらもっと楽になりませんか?ということです。

 

人間の体は筋肉で動いています。

 

筋肉が張力を発生させ、張力があるので体が動きます。

 

張力を得るには2つの方法があります。

 

①筋肉を収縮させる

②筋肉を作る物質、素材そのものが持つ張力を利用する

 

一般的にイメージされるのは①です。

 

体をぎゅっと押し縮めた状態では、筋肉がそもそも持っている素材としての長さよりも短くなります。

 

長さが短くなるということは放っておくと筋肉がたるんだままということです。

 

これでは張力を作れず姿勢も維持できません。

 

長さが短いまま張力を作るには筋肉が収縮しなければなりません。

 

つまり何かする前から常に筋力を使ってるわけです。

 

特に外側の筋肉がぎゅっと縮むと内側の筋肉が張力を出すにはもっと縮む必要が出てきます。

 

この連鎖で全部がぎゅっと縮んだら関節も動きにくいし疲れます。

 

で、力を抜きましょう、と言われるわけです。

 

でも本当に力を抜くと筋肉がたるみます。

 

これもまた張力を発生させるのは無理です。

 

アレクサンダーで目指すのはこのどちらでもなく、①と②を一体として使うことです。

 

①は誰でも普通にできるので、どちらかというと②がポイントになります。

 

そのためには長さが必要になります。

 

短いとたるむなら長くすれば張るでしょ、という単純な話です。

 

素材として張った状態であることが実現できれば、筋肉は本当に必要な時だけ収縮すればこと足ります。

 

結果、力を使わずに楽に動けるようになります。

 

特に頭と脊椎においてこういう使い方ができると、手足を含めた全身の動きがスムーズに自由になるので「頭が胴体から離れる方向で動き続けられるように」と考えるわけです。

 

ここまでわりと理念的な説明をしましたが、アレクサンダーをやった時の生理学的変化として実際に椎間板の圧縮力が軽減するらしいです。

 

>>『職場における腰痛の効果的な治療法等に関する研究』

 

こちらの23-26ページに関連の論文が入っているので読んでみてください。

 

欧米では国によりアレクサンダーのレッスンに保険が効くところがあるのはこういう理由からでしょう。

 

岡本さんに手でガイドして力を使わずに立つようにしたら「身長が伸びました」という感想をいただきました。

 

そうなんです、測ると実際に伸びることもあります。

自己の使い方ってどういう意味?

体で起こって欲しいのは上で書いたようなことですが、長くするために何かしようとすると「何かをしようとする」という考えそのものがこれまでの習い性で筋肉の収縮を起こしてしまいます。

 

また不安、心配、焦りといった感情にそのまんま反応しても余計な筋肉が働いてしまいます。

 

なので感情とか何かをやろうという考えが生じた時に、それに対してどのように反応するかをよく考えて選ぶ必要があります。

 

ここはちょっと分かりにくいです。

 

感情を持つのも何かをやろうと考えるのも自分自身。

 

で、その同じ自分がそれに対してどのように反応するかよく考えろと言っているわけです。

 

小手先の対応で望む結果が得られるならこんなことをする必要はありません。

 

しかし突き詰めて根本的な対処をしようとすると思考の領域に入っちゃうんですね。

 

そういうわけでアレクサンダーでは体とメンタルを分けません。

 

体でやることとメンタルのプロセスまるごと全部をどうするか、という意味で「自己の使い方(Use of the Self)」という言い方をします。

 

そこで整動鍼の取穴の話になり、僕の場合はまぐれでうまくツボが取れた次に「あの感覚をもう一度」と思ってたいがい失敗することにふれました。

 

うまく取れた時と「あの感覚をもう一度」と思ってやる時では手の使い方が同じではありません。

 

感覚を急いで取りに行こうとする触り方はたいていなにか余計なことをしています。

 

そうすると指先でひろう情報が変わってしまいます。

 

必要なのは同じ手の使い方をすることですが後の祭りでもう覚えていません。

 

そしてまた一からやり直し・・・

 

どういう手の使い方をすると、どういう感覚が上がってくるのか、そしてどういう感覚が上がった時にツボと判断するのか、始めたばかりでは分かりません。

 

分かんないけど、手の使い方は当初から意識的に決めてやる方が良いのではないか。

 

決めると言ってもあくまで仮決めなので後で改良して良く、むしろ改良するために決めます。

 

F1のマシンだって設計図や過去レースのセッティング記録があるから次のレースで何を変えるか考えられますよね。

 

そんなようなことです。

 

このような、目的に至る手段をメンタルのプロセスも含めて意識的、論理的に考えてやりましょうというのはアレクサンダー的な発想です。

 

その際、意識的であるために体の面での解像度を上げる役に立つのがボディ・マッピングだし、思考の面でもやることのプランとして体にオーダーするもの、加工されていない生の情報としての感覚情報、自分の受け止め方(認識、評価、判断etc)などなどを明確に整理します。

 

とにかく何も考えずにやみくもにツボを取ってもうまくなる人はいると思います。

 

でも経験の量が増えれば増えるほど、1回1回意識して決めてやる場合との差が開いていくんじゃないかしら、と思うわけです。

 

まだ分かんないですけど(笑)

 

長くなったのでまた次回に続きます。

この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

カテゴリー: アレクサンダー・テクニーク. タグ: .
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