オーボエ奏者の腕はどうあるべき?
趣味でオーボエをなさる方から聞かれました。
「オーボエを構えるのに脇を締めるのと開けるのとどちらがいいんでしょうか?」
結論から言うとどちらでも構えることはできると思います。
考えなければならないのは楽に持てて運指にも無理がないことです。
僕はオーボエを吹いたことがないので分かりませんが、多くのオーボエ奏者がこんなふうに指を寝かせ気味にして構えるのは経験的に知っています。
恐らく人差し指の側面で操作するキーがあったり、トーンホールの間隔の都合でこうする必要があるのだと思います。
問題はこの動きをどうやって作るか。
手首の関節でやることもできるし、前腕の回内の動きでやることもできます。
前者は手首を親指側に曲げる動き(撓屈)と手の甲の側にそらせる動き(背屈)の組み合わせです。
ただしこれだけで構えると手首が固まったような感じになり指の動きは悪くなります。
長時間速いパッセージを練習しまくると腱鞘炎になるリスクがより高いです。
後者は、腕の肘から下(前腕)を使った動きです。
パッと見では手首を回してるように思いますが、実は図のように肘から先の2本の骨がクロスしたり並行になったりして作っている動きです。
実際にはどんなオーボエ奏者でも前者と後者両方の動きを組み合わせて楽器を構えています。
前腕の回内の動きの方が指への負担は少ないので、バランスとしては回内がメイン、手首の動きは補助的微調整とするのがケガ予防の観点からは良いでしょう。
もう1つ考えなければならないのは息の問題。
息の出入りは肋骨の動きであり(+横隔膜)、実は肩甲骨の動きと肋骨の動かしやすさに関係があります。
前鋸筋(ぜんきょきん)という筋肉が肩甲骨から肋骨に向かってついていて、肩甲骨を前の方に持ってきてそこで固定しておくと肋骨を引き上げる作用があります。
つまり息がより多く吸えるのです。
肩甲骨には腕の骨がついているので、肩甲骨を前の方に持ってくると腕がまるごと全部前に移動します。
ところが楽器をくわえる口の位置は変わらないので、腕の長さなど骨格の個人差によっては、少し肘を上げないとうまく構えられないケースがあり得るわけです。
これが脇を開けているように見えるのではないかと推測します。
もちろんやり過ぎは別な弊害を生むので程度問題ですが、息をうまく吸ったり吐いたりできて指回りに問題がなければ、それがその人にとっていい具合の構え方ではないかなあと思います。
つまり、見た目ではないのですね。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師