頭がリードして体がついていく、のか?
こんにちは!ハリ弟子です。
The head leads and the body follows.(頭がリードして体がついていく)
アレクサンダー・テクニークの教師養成校で、このメソードの原理を説明するものとしてしばしば引用される言葉ですが、実はアレクサンダーの言葉ではありません。
ルドルフ・マグナス(Rudolf Magnus)という生理学者の講演が出所です。
マグナス(1873 – 1927)はドイツ出身の生理学者で、脳を部分的に切除したらどうなるか動物実験で研究した人です。
この研究の成果が現在でも姿勢反射の一部として医療の世界で教えられています。
また、アレクサンダー自身も自著で引用していることから、アレクサンダー・テクニーク関係者の間でもよく知られています。
1年ほど前にもこのブログで言及したことがありますが(>>頭と首から始める理由)、最近になって、そのとき見つけられなかったマグナス本人が書いた文章を発見しました。
問題の箇所は、3. Combinations of Tonic Labyrinthine and Neck Reflexes.の末尾の文章です。
The mechanism as a whole acts in such a way that the head leads and the body follows. The attitudes impressed upon the body by a certain head position in the decerebrate preparation closely resemble the natural attitudes shown by the intact animal during ordinary life.
文章全体をよく読むと、これは除脳動物の頭を動かした時に四肢がどのような反射運動をするか実験した話に続いて述べられています。
除脳動物とは手術で脳を切除した実験動物です。
つまり脳によるコントロールをなくした条件下での反射運動について述べたものであることに注意が必要です。
アレクサンダー・テクニークは意識的なコントロール(Conscious Control)を学ぶものなので、こういう反射運動の話を科学的根拠として使ってもいいものかどうか疑問符がつきます。
そもそも我々は除脳されていませんし、、
マグナス自身は、”closely resemble the natural attitudes shown by the intact animal during ordinary life”と述べているので、”the head leads and the body follows”が健常な動物の自然なふるまいの原理であると考えていた可能性はあります。
そうだとしても、それはマグナスの説であって事実ではありません。
除脳動物のふるまいを健常な動物のそれに”closely resemble”(とってもよく似ている)というのは、どういう意味で言っているのか分かりませんがちょっと無理がある気がします。
アレクサンダーが生きていた当時はこれが先端の神経生理学だったでしょうからそれなりに受けたのだと思います。
しかしマグナスがこの説を述べたのが1926年、アレクサンダーが自著に引用したのが1932年、これを科学的根拠として引用するのはそろそろやめてもいいのではないでしょうか。
こんなものを根拠にしなくても、アレクサンダー・テクニークが有効であることは実際のレッスンを通じて分かっていくことでしょうから。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師