自動化という幻想
こんにちは!ハリ弟子です。
先日は台風、今朝は起きたら北海道の地震、、
道内全域停電のニュースに耳を疑います。
ハリ弟子も被災地域に知り合いがいますが、幸いにもみなさん無事でした。
一日も早い復旧をお祈りしています。
さて今日のブログはパフォーマンスの自動化について。
ハリ弟子は中学生のころ吹奏楽部でした。
当時の練習法はとにかく体に覚えこませるもの。
時間だけは潤沢にあって、少ない曲数をとにかくさらいまくりました。
合奏になっても毎回毎回そんなにテンポが変わることはないので、まあ合うわけです。
ある程度の縦横の調整はしますが、考えなくてもできるレベルまで体に覚えこませ、自動演奏マシンと化すことでコンクールでも安定した演奏、安定した賞を取ることができました。
ただ、こういう方法で通用するのは初歩の基礎的な技術の習得までのような気がします。
大人になるともっと状況に応じてその場に合った適切な表現をすることが大切になってくるからです。
本番の条件下で、周囲の情報を受け取り続けながら、考え続けながら、次にやるべきことを選び続けながら、今やることをやり続ける能力が必要とされてきます。
吹奏楽コンクールの成功?体験のせいか、ハリ弟子はだいぶ後になるまでこのことを分かっていませんでした。
体に落とし込んで自動化しないとその技術をものにしたような気がしないのです。
こういうことに気がついたのは実は役者さんの世界に触れてからです。
アレクサンダー・テクニークはもともとオーストラリア出身の俳優であったアレクサンダーさんが始めました。
Body Chanceの校長Jeremyも若いころ俳優をしていて、また、毎年教えに来てくれるアメリカのCathy Maddenも演劇畑の人です。
そんなわけでBody Chanceにはいつも役者さんの生徒が何人かいます。
彼らのレッスンを何回も見てるうちに、自動化というのが幻想に過ぎないことが分かりました。
彼らは稽古してきた台本、セリフ、動きをなぞったらアウトです。
やらなければならないのは、舞台の上で役柄の人物を「生きる」ことです。
何かに驚くシーンがあるとしたら舞台の上で本当に驚くことを考えなければなりません。
何回も稽古してきたにも関わらず、初めてそれを見て驚くようなアクションを取る。
そこには自動化の発想がありません。
しかも初めて板にのる初心者のときからそれを求められます。
こういった文化がもう決定的に違っていて、役者さんのレッスンはいつも刺激的でした。
実は鍼灸施術にもこれが役に立っていて、ハリ弟子には助けになっています。
鍼灸の世界では「こんな症状にはこのツボ」という症例集が数多く出されていて、そういった技術をできるだけ学んで自動化するのが鍼灸師のスキルアップだと以前は思っていました。
その方が安心もできますし。
でも顧客満足度の観点からは、あまりよろしくありませんでした。
何の論理的裏付けもありませんが、自分が少々アップアップな状態でなんとかひねり出したツボや手技の方が、どういうわけか患者さんへの効果があるのです。
今でも症例はいっぱい勉強しますし、よその技術でいいと思ったものは血眼で盗もうと努力しますが、患者さんに相対するときはその日の自分の知識レベル、技術レベルを前提にあえて1歩未体験ゾーンに入って治療するように努めています。
一生、安心は得られないかも知れませんが、音楽のパフォーマンスも鍼灸の施術も全身全霊でそのときやるべきことをやる、そんなことを役者さんたちのレッスンから学びました。
ちなみに演劇理論のバックボーンとしてスタニスラフスキーという人の『俳優の仕事』という本があります。
ハリ弟子にはこれが大変勉強になりました。
最後にご紹介しておきます。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師