緊張性発声障害と姿勢の関係
2020年、明けましておめでとうございます!
この年末年始は31日まで開けていて、元日だけ休み、昨日から仕事開始。
音楽関係者はやはり年末年始に仕事の人が多いですから、緊急で駆け込まれても大丈夫にしました。
予想以上に多くの患者さんにいらしていただき、こちらが驚いてしまいましたがお役に立てて良かったです。
年末に緊張性発声障害の患者さんが続いたので今日はそれについて書こうと思います。
発声障害では、喉そのものを治そうとしがちです。
でももっと大事なことがあります。
息です。
そもそも息が流れていなければ声帯は振動しません。
そのため鍼灸でもアレクサンダー・テクニークでも、まずやることは息が十分流れやすい体のコンディションを整えることです。
息が流れていても声に変化がなければ、そこで初めて喉の問題(炎症など)へのアプローチが必要と分かります。
ですが息の流れをよくするだけで多くが声の出方が楽になります。
必ずしも全てに当てはまるわけではありませんが、緊張性発声障害では、首をうなだれるようにして胸を落としている人が多く、この姿勢も息の流れに影響があります。
気道は頚椎の前を通ります。
あまりにも首を前に倒すと、胸骨から上に出るところで気道が折れます。
折れ曲がったゴムホースのようなイメージです。
これでは息がスムーズに流れません。
また胸を落としていると腹部内臓の圧迫を受けて横隔膜が十分に働けません。
息が吸いづらいのです。
吸えてないので、声帯を振動させるのに十分な息が吐けません。
このような姿勢になる時、体で起こっているのが胸鎖乳突筋と腹部の緊張です。
逆に胸鎖乳突筋と腹部の筋肉の緊張の結果、このような姿勢になり、声が出なくなるとも言えます。
筋肉は緊張しっぱなしだと何も動かすことができません。
本人の自覚的には疲れるし頑張ってる感じはあるのですが、縮みっぱなしの筋肉で作れる動きはないのです。
なぜなら動きは筋肉の伸びたり縮んだりが両方できて初めて生じるものだから。
鍼灸では緊張した筋肉をゆるめて、伸び縮みの調節が可能な状態に戻します。
僕が採用している整動鍼では、胸鎖乳突筋と腹部の緊張には手と足のツボを使います。
喉やお腹には鍼をしません。
またこのような姿勢になってしまうのには、心理的・環境的要因があったりします。
転職、入学など新しい環境になったり、人間関係のストレスがあったり、あるいは過去の失敗の記憶など、さまざまな要因がからんでいて、その姿勢を手放すのが難しいケースです。
アレクサンダー・テクニークでは、いったん体を楽なコンディションにした上で、その姿勢に戻ってしまうのはどのような思考を持った時なのか、ワーク中の何気ない会話で引き出していきます。
きっかけとなる考えが分かり、それへの反応として声を出しづらい姿勢に戻ろうとするのであれば、おおもとの思考を別の思考に置きかえれば良い。
思考も癖みたいなものですから、外部からの刺激への単なる反応であることがよくあります。
他人から自分への評価だったり、家族から自分への言葉だったり、あらゆるところにこの反応を引き起こすきっかけがあります。
そういう刺激を受けたら一瞬、間をとって、本当に自分はそう思いたいのか、思ってもいいけども自分にとって無害な意味に解釈することはできないのか、考えてみるのです。
他人から自分への評価は自分が他人にこう思われたいという望みと表裏の関係にあったり、家族から自分への言葉に反応してしまうのは自分が家族を大切にしたいという思いに基づいていたり、ということが意外とあります。
このように意図的に思考を選び直すことで、声が出しづらくなる姿勢に戻るという体の自動的な反応を起こさないようにしていくのが、アレクサンダー・テクニークのレッスンです。
なおアレクサンダー・テクニーク自体は動きを取り扱うものなので、姿勢という概念はありません。
姿勢とは動きの一瞬を切り取ったもの、あるいは動きを止めて固定化したものを姿勢と考えて、姿勢も動きの一種として扱います。
発声障害の話から、生きづらさの解消法みたいな話になってしまいました、、
なにはともあれ5年目まで生き延びたbodytune、本年もよろしくお願いいたします!
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師