管楽器演奏と喉頭の位置
ボイス・トレーナーなど声や喉を専門とする人の間では、喉頭が後ろに引っ込むことで発声に悪影響があるとされているのを最近知りました。
この図を見ると分かるとおり、喉頭は首の前側にあります。
喉頭が後ろに下がるとそこには硬い頚椎があってそれ以上後ろに行くことはできないので、間にはさまっているお肉もあいまって気道がせまくなります。
流体力学によれば、同じ量の気体が広いところからせまいところを通過するとき、エネルギーは流速に変換されるとともにロスが出ます。
仮にエネルギーをなるべく損なわずにアンブシュアまで息を届けることを効率の良さとするなら、気道だとか喉だとかで通り道が広がったりせまくなったりするのは望ましくないことです。
もちろん喉頭が多少引っ込んでいても音は鳴りますが、ポテンシャルを最大限生かしているとは言えないのでしょう。
こう考えると、管楽器や声楽を専門とするアレクサンダー・テクニーク教師が「硬口蓋に息を当てるようなつもりで」とか「息は前側を通る」「息は前方向に斜めに上がる」と言っていることの意味が分かります。
後ろに引っ込んだ喉頭を随意的に前に引き出すのは難しいので、マッピングを利用した体への指示を使って間接的にそういう動きをうながすのだと思います。
逆に、喉頭の後ろへの引っ込みが常態化して不利な条件で吹き続けると、それをリカバーするために他のところで無理にがんばる必要が出てきます。
その結果、鼻抜けなどの不調になるケースがひょっとしたらあるのかも、と最近考えています。
声の分野ではこの観点から喉の施術をする専門家もいるそうです。
管楽器の発音体は喉ではありませんが、声よりも高い圧をコントロールするわけですから、やはり気道のありようは重要に思います。
過去に見てきた鼻抜けのケースをこういった観点から再度研究し直しています。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師