息の圧・スピードについて考える
こんにちは!ハリ弟子です。
管楽器の世界では息の圧とかスピードといった概念がよく出てきます。
ハリ弟子ももともとTubaを吹いていたのでなじみがなくもないのですが、実はあまりよく分かっておらず圧もスピードも同じような概念としてぼやっと考えていました。
ですが最近、アレクサンダー・テクニークのレッスンで管楽器の方のご相談を多く受けるようになり、このあたりのことを自分でも分かっていた方がいいと思いあらためて勉強し直しました。
まず、物理学での圧・スピードについて考えます。
息は空気です。
空気は流体です。
流体の動きにおける物理法則にベルヌーイの定理というものがあります。
物理の苦手なハリ弟子が理解し得たレベルでざっくり言ってしまうと、圧とスピードを足したエネルギーの全体は一定であるという法則のようです。
吐く時の息に当てはめると、肺の中の空気は基本的にただそこにいるだけなのでスピードはほとんどなくて圧が高いですが、口の中に来ると肺に比べてかなり狭いスペースを通ることでスピードが増して代わりに圧は(肺の中よりも)減る、ということです。
金管も木管もフルートを除けばマウスピースと唇で出口は基本密閉してすごく小さな出口を作っているので、アンブシュアの話はとりあえず考慮から外しておきます(リードへの「圧」とか金管のマウスピースへの「プレス」は文字通り唇でものを押す力なので空気そのものが持つ「圧」とは別物と考えます)。
気管や気管支のサイズは任意に変えられるものでもないので、ここも無視します(実際には声門でのコントロールがあり得ますがこれも考慮から外します)。
このように単純化すると、出したい音の高さ、音色などに見合った適切な息のスピードなり圧なりが出口に至る直前のところで実現するような、胴体や口の中(主に舌?)の使い方が管楽器の演奏には大切なようだと見えてきます。
仮にここで肺の中の圧が一定とすると出口での息は口の中で決まることになります。
舌を使って口の中を狭くすればスピードはより速く圧はより低く、反対に舌の形を変えて口の中を広げればスピードはより低く圧はより高くなります。
逆に口の中を変えないとすると出口での息は肺の中の圧で決まることになります。
肋骨を動かして胸郭の容積を素早く小さくしようとすれば肺の中の圧が高まり、出口での息はスピードも圧も上がります。
上との比較で肋骨をゆっくり動かせば肺の中の圧はそんなに高くならず、息のスピードも圧もそんなには上がりません。
実際の演奏では肺の中の空気はどんどん減っていくし、あるいは吐く息の量を節約して吹き始め後で増やしたりもできるので、始めの方で述べた圧とスピードを足したエネルギーの全体そのものが時間とともに変わります。
前提が刻々と変わるところで口の中と肺の両方をどうにかして、ある一定の条件を息の出口のところで作るのが管楽器演奏技術の一面だと思います。
余談ですが息の支え(息を吐きながら同時に息を吸う動きを継続すること)という考え方の背景には、肺の中の圧が一定になるよう意図的にコントロールすることで、口の中でやるべきことをより単純化、明確化できることがあるのではないかと考えています(あくまでも理屈の上での話)。
なおここで言っている「圧」「スピード」「圧とスピードを足したエネルギーの全体」はそれぞれ、ベルヌーイの定理における「静圧」「動圧」「全圧」の意味で使っている(つもり)です。
とは言えハリ弟子も物理は得意ではないので、間違っているところもあるかも知れません。
もし変なところがあったら、お問い合わせ用メール・アドレスからこっそり教えてください、、
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師