パーキンソン病とアレクサンダー・テクニーク
こんにちは!ハリ弟子です。
少し古いですが(2002年)、パーキンソン病患者さんの症状がアレクサンダー・テクニークのレッスンで改善するかどうか検証した研究があります。
Randomized controlled trial of the Alexander technique for idiopathic Parkinson’s disease
パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン神経細胞が減少することを原因とする、日本でも難病に指定されている病気です(>>難病情報センターのページ)
ふるえや筋肉の固縮、姿勢保持反射がうまく働かなくなるなどの症状があり、進行性です。
欧米では、アレクサンダー・テクニークは代替医療の1つに位置づけられていることが多く、西洋医学での治療が難しい病気に関して、代替医療による症状緩和の有効性検証がよくなされています。
この研究もそうしたものの1つなのでしょう。
研究では、93人の患者さんをアレクサンダー・テクニークのレッスンを受ける人、マッサージを受ける人、何もしない人の3グループにランダムに分けて結果を比較しています。
アレクサンダー・テクニークとマッサージはともに24回のレッスンないし施術です。
結果、アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けたグループでは症状に改善が見られて、比較的その効果が持続したということです。
リンク先は要約だけで、マッサージの結果については書いてないので分かりません。
アレクサンダー・テクニークでは中脳黒質の病変は治りません。
では何が起こったのでしょうか?
推測に過ぎませんが、パーキンソン病にかかっていたとしても、その人のバランス感覚などの能力は元々もっと引き出す余地があったのではないかと思います。
人間の身体能力は常に100%出さなくても生きていけるよう余裕のある設計になっています。
例えば、普通の人が7割くらいのバランス能力を発揮すれば日常生活で困ることがないとします。
でも、その同じ人が体操選手のように平均台の上で歩こうとしたら、9割くらいまでバランス能力を発揮する必要があるでしょう。
もしかしたら9割の能力を引き出すために多少の訓練とか練習を要するかも知れません。
普段7割くらいの能力で生活していた人がパーキンソン病になったとしたら、その人は常にその時々の7割で生活し続けるでしょう。
培われた習慣的な体の使い方がそうなっているからです。
病状があるところまで進行すると、歩行などの日常生活に支障が出始めますが、でもその時点ではまだ残り3割の能力が温存されていると考えます。
なので、アレクサンダー・テクニークのレッスンで9割まで使えるようにすれば症状が改善したように見えると思います。
問題は、この進行性の病いで効果がどのくらい継続させられるかです。
研究では6か月後までをフォローしており、そのくらいまでは効果の持続を確認しています。
これを年単位で持続し、病期の進行を遅らせる、あるいは止めることができれば本当にすごいと思うのですが、、
パーキンソン病は進行がゆっくりしているので、早期に診断をつけて治療を始めることができれば、症状が軽いままで過ごせる期間がより長くなるそうです。
少し前にご紹介した鍼灸の研究症例(>>パーキンソン病と鍼灸治療)とも合わせて、患者さんにとって有効な選択肢が1つでも増えるといいなと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師