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bodytune(ボディチューン)音楽家のための鍼灸

たかが片耳、されど難聴

" 耳鳴り・難聴 "

2020年11月9日

当院には突発性難聴で鍼灸を受ける方も多くいらっしゃいます。

 

突発性難聴の多くは片耳に起こります。

 

片耳の難聴という意味では(何度かこのブログでも書いていますが)僕自身右耳の難聴です。

 

10歳くらいからちょくちょく中耳炎にかかるようになり、13歳で真珠腫性中耳炎の診断が下りて手術、鼓膜や耳小骨を切除しました。

 

これだけのキャリア?があるので自分では片耳が聞こえないのがどういうことなのかよく分かっているつもりでした。

 

ところが突発性難聴の患者さんをみていて、どうも自分は片耳が聞こえないことによる困りごとをあまり理解していないらしいと気づきました。

 

正直言うと困ってないんですね、僕自身は片耳でも。

 

耳鳴り無視できます、健聴側が聞こえるから大丈夫、という感じで。

 

強いて言えばもともと右で取っていた電話を意図的に左に変えたことはあって、それはだいたい10歳ころのことでしたが、覚えているのはそのくらい。

 

とっても逆説的なんですが当事者なのに(というかだからこそ?)患者さんの困りごとが分からないというジレンマがありました。

 

僕自身は「片目、片耳は障害にならない」という言葉を子どものころにどこかで聞いていて、問題が仮にあってもそれを片耳のせいにする考えがそもそもありませんでした。

 

しかし両耳で聞く人と「同じ」ではないわけで、患者さんはその「同じ」ではない世界にある日突然放り込まれるわけです。

 

だからより鋭敏に反応して困惑するのは当たり前で、当事者の立場にあぐらをかくのではなく、施術する側としてその違いをしっかりと理解する必要があると思いました。

 

片耳難聴の世界を理解するのにとても良い動画を見つけたのでご紹介します。

 

もしご自身が当事者の場合、片耳の突発性難聴では一過性にこのような状態にある、また残念ながら回復しなかった場合にはこのような聞こえの特性が自分の一部になると考えればよいと思います。

 

 

両耳が聞こえることでできている(逆に言うと片耳だと不自由に感じる)ことがあって、8:20あたりから解説されています。

 

僕自身の体験もまじえつついくつか取り上げてみます。

片耳だと音が少し小さく聞こえる

同じ音でも片耳だと数デシベル程度小さく聞こえるそうです。

僕はそれが普通になってしまっていて分かりませんが、突発性難聴で急に片耳が聞こえなくなった人にとっては大きな違いに感じられるかも知れません。

音がする方向が分からない

人間は音でも空間を感じ取っています。

左右の耳に届く音のわずかな時間差や大きさの違いから音がどこから来たのかが分かります。

片耳だとこの能力が落ちます。

電話がどこから鳴ってるか、僕自身どうやってるかというと頭動かして聞こえる耳をいろんな方に向けることで当たりをつけてる気がします。

雑音の中での聞き取りが苦手になる

たくさんの音が同時に鳴っている環境で特定の音声だけ注意して聞き取るのは両耳が聞こえないと難しいそうです。

聞きたい音以外の雑音をカットする機能が脳にはあるのですが、それは両耳で聞かないとうまく働かないらしいのですね。

これは僕も知りませんでした。

居酒屋のようにわいわいがやがやしているところでの会話が昔から大の苦手ですごく疲れるので、自分では人づき合いが苦手な性格なのだと思っていました。

言葉の聞き取りが苦手になるかも知れない

人は片方の耳で聞きもらした音をもう片方の耳で補って聞いているそうです。

当然、片耳だけだと聞き落とす可能性が高まります。

これも僕は知りませんでした。

両耳であればそんなに注意してなくても聞き取れることが片耳ではかなり集中してないといけません。

場面にもよりますが、聞き取ることの疲労度が増すと言えるでしょう。

上記の雑音の中での聞き取りとも関係しますが、僕の場合は交通量の多い道で人と一緒に話しながら歩くのがちょっとしたストレスに感じます。

相手が1人ならまだ頑張れますが、2人、3人と増えると対向者に道を開けるためをよそおってみんなから少し離れたりします。

学校など、帰る時間わざわざずらしても1人で帰ることを選んでたり・・・

これも性格だと思っていましたがもしかしたら聞き取れないのが苦痛だったのかも知れません。

実際みんなでわいわいするのが苦痛な性格なので、もはやどっちだか分かりませんが(笑)

聞こえない側からの音がひろいにくい

当然のことながら、聞こえない方の耳に向かって話しかけられても聞き取りにくいです。

以前サラリーマンだったころ、会議中に隣の人から聞こえない方の耳元でこそこそ話しかけられてまったく聞き取れず、あいまいに笑い返したら「笑いごとじゃないだろ!」と怒られたことがあります。

こういうときどう反応するかは性格が出るところかも知れません。

分かるまで繰り返し言ってもらう人もいるでしょうし、僕のように聞こえたふりをして流してしまう人もいます。

 

あらためてこうして見ると、困ってないはずなのに自分がいろいろ工夫していたことに気づきました。

 

しっかり話をしなければならないときは相手には正面か聞こえる耳の側に座ってもらうし、またはそうなるように自分が立ち位置を変えます。

 

自分が聞き取れているかどうか確認するために要所要所で「つまり、こういうことですね」と自分の理解した話を相手に聞いてもらいます。

 

会議やセミナーでは早めに到着して自分が聞きやすい席を確保します。

 

なんとなく口伝えで物事が動いて行く現場では、自分の理解でいいかどうか一緒に動く人に再確認します。

 

全部カバーできるわけではありませんが、それなりに失敗せずに済んでいるように思います。

 

反対にどうしてもカバーできないところは完全にスパッと捨てているところがあります。

 

僕の場合は飲み会の盛り上がりに乗ることや大勢で歩きながらの会話です。

 

少人数の集まりなら頑張り過ぎない程度に聞き取る努力をすることもありますが、無理はしません。

 

この辺はもともとの性格もありますし人それぞれなんだと思います。

 

突発性難聴の場合はまずは治ることが優先で、治る場合は聞こえない期間がそれほど長くない可能性もあります。

 

困るなあと思ってるうちに治ってしまうかも知れません。

 

また回復しなかった場合でも聞こえの状態が安定するにはしばらく時間がかかることもあります。

 

自分がなにに困るのか分かるにもしばらく時間が必要でしょう。

 

いろいろ失敗的な体験もすると思います。

 

でもそういう時間を自分に許すことも大切だと思っています。

 

たかが片耳と思っていましたが、されどやはり難聴ですね。

 

突発性難聴などで突然この世界に放り込まれてしまった方にいくばくかでも参考になればと思い、書いてみました。

 

最後に「きこいろ」という片耳難聴のための情報サイトをご紹介します。

 

≫ きこいろ 片耳難聴のすべて

 

僕もこちらで初めて知るようなことがたくさんありました。

 

たいへん有益でおすすめなサイトです。

この記事を書いた人

2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。

2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。

はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師

 

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