弦楽器弾いた後で声がかすれる理由を考えてみた
先日シャツの第2ボタンが取れてしまいやむなく第1ボタンで閉めることがありました。当然、喉がきつくて「うえっ」となりましたが、思うところあってボタンはそのままに肩を前にせり出して巻き肩のような形にしてみました。すると喉の苦しさが消えました。
そこでふと思いました。シャツでそうなるということは、人間はいつも皮膚を着てるようなものだから、皮膚でも同じことが起こっているのでしょうか?つまり肩を後ろに引いていると喉の皮膚が後ろに引っ張られて潜在的に喉に苦しさを生むってことです。もちろんそんな自覚はないんだけど。
そういえばコントラバスの練習をした後でよく声が枯れていたことを思い出しました。長時間歌ったり話したりしたなら分かりますが弦楽器だからほとんど発声していません。なのに練習後、例外なく声が枯れるのです。あれはもしかしたら楽器演奏で肩を後ろ気味にしてたせいなのかも・・・
面白いので考察してみました。
まず皮膚がどのようにずれるのかを確認してみます。下顎骨下縁のラインを境に上側(顔面部側)の皮膚は下にずらしにくいですが、下側(あご下)の皮膚は上にずらしやすいです。また首の皮膚は後ろ側にずらすことはたやすくできますが、前側にずらすのはやりにくい。今のところ数名のサンプルではおおむね皆同じ傾向でした。
皮膚には伸びやすい方向と伸びにくい方向があるようです。そしてこの実験から下顎骨と胸骨の間のエリア(声帯のあるところ)はよその場所から皮膚をずらして持って来づらいらしいことが分かります。
ということは肩を後ろに引くと喉まわりの皮膚が引っ張られて声にも影響があるのかも知れません。
また逆に肩を前に持っていけば声は出しやすくなるのでしょうか?
まだ短時間しか試していませんが少なくとも喉まわりの詰まり感は軽減されるような気はしています。ただし肩の位置は姿勢と密接にかかわります。長時間試してみたいのですがよほど気をつけていないとすぐに元の位置に戻ってしまいます。影響が頭や脊椎そして肋骨にまで及ぶので違和感がありありで戻したくなるのですね。
もう1つ、肩を前に持っていくことの効能として考えられることがあります。
骨格模型で肩を後ろに引いてみるとこのように鎖骨と肋骨の間のスペースが詰まります。
逆に肩を前に持ってくると鎖骨の下にスペースができて肋骨が動きやすそうではないでしょうか?
声を出すには息を吐く必要があります。呼吸は肋骨の動きによってなされるので鎖骨で肋骨をロックしてたら当然声にも影響が出ます。僕に起こっていたのも息のしづらさから声を出しづらくなっていたのかも知れません。
あくまで個人の感想で普遍性があるのかどうかは分かりません。おもしろいのでこの現象はこれからも検討していきます。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師