鍼管の先端に見えるもの
先日、鍼師が使う道具、鍼管について書きました。
鍼師が鍼管に求めるのは内径の細さだけではありません。むしろ先端の処理を気にすることの方が多いように思います。
この鍼管は内径1.5ミリで既製品ではもっとも細かったので試しに買いました。しかし端がスパッとカットされていて人の肌に当てるとひっかくような感触がします。
理想は下のような形です。丸みを帯びた仕上がりで肌にやさしく刺激になりません。また皮膚面に対して斜めに鍼をするときもこの丸みがたすけになります。
使い捨てのプラスチック鍼管の場合、金属鍼管1本分の値段で100本(プラス鍼)がついてくる相場感です。なので先端処理まで気にしたことはありませんでした。コスト的に見合わないと思ったので。
ところが新しいユニコの鍼管は当たりがやわらかいです。今まで使っていた他社のものと比べても違います。
肉眼でよく見ると他社の鍼管はこのように端が削られていました。
この理由は察しがつきます。片手挿管です。内側にすり鉢状にへこませた方が鍼をセットしやすいのです。鍵穴でもそのように作られていることがあります。これなら多少雑につっ込んでも鍵が鍵穴に入ります。
しかし鍼管でこの形を強調し過ぎると縁の部分が患者さんの肌をひっかきます。いや、実際には上の図ほどとがってはおらずある程度外側を面取りしてあります(下の図のように)。しかしそれでも引っかいたような感触を残してしまうのです。
それに対しユニコの新しい鍼管はこんな形状をしています。
内径を絞った上にすり鉢をひかえめにしているので挿管はしづらいです。その代わり患者さんが肌から受ける印象はとてもやわらかくなります。鍼師側の都合を犠牲にしても患者さんの印象を良くすることを優先したことが分かります。
個人的にですが、ディスポーザブルのプラスチック鍼管が普及したことで、金属鍼管時代に培われたさまざまな仕様がデチューンされたのではないかと思っています。まったく別の素材で大量生産しなければならないので仕方のないことでもあったでしょう。
しかしこの鍼管の登場でプラスチック鍼管もステージが一つ変わる気がします。これからはもう、たかが使い捨てと侮れません。
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2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師