鍼で心が広がる
先週末は整動鍼のセミナー「身心和合編」を受けてきました。
例によって盛りだくさんな内容。
今回も多種多様な連動が出てきて、体に備わる巧妙な動きのシステムを知ることとなりました。
ダンスとかバレエ、ヨガで「頭が天井からつるされているような感じで」とよく言われます。
こういう言葉に象徴されるように人間の運動制御は体という枠を超えて、もっと広い空間に軸や重心を想定するものが数多くあります。
ありふれた「歩く」という動作さえ、体より前のどこかに重心をずらすことで脚が前に出て進み続けることができます。
体が実際に制御できるのは皮膚より内側だけにも関わらず転ばずに歩けるということは、体の外側のどこかとバランスを取るよう体の内側を制御する仕組みを考えざるを得ません。
こう考えると引っ張り合う2点の片方が体外になるような、そんな連動が想像できます。
体の外と中でバランスを取るよう制御されたとき、体に実際に現れる表現形を理解できたらおもしろそうです。
頭と仙骨、右手と左足、左手と右足など、基本とする連動のパターンはあれど想定する空間の間尺に応じて出来る・出来ないが分かれる動作があるかも知れません。
ヨガのアーサナやダンス、バレエは普通ではあり得ない動きをしますから。
広い空間を想定していないとああいう動きはできなさそうです。
逆に思うのは、痛みや不調をうったえる患者さんの体に生じたツボの過緊張は間尺を必要以上に縮めた表れのように見えること。
実際の体の境界、皮膚より狭い間尺で動いているとしたら人はそれを生きづらいと感じるのではないでしょうか。
鍼で緊張をゆるめると間尺が大きくなります。
その間尺は結局その人が心の中で自分に与えている空間のことですから、鍼をすることはその人が生きる空間を広げるお手伝いとも言えます。
体を広げることで心まで広く軽くなる。
鍼の可能性を大きく広げる「身心和合編」、タイトルに得心した二日間でした。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師