吹いてると腕がだんだん痛くなる
オーボエ奏者の方がいらして、吹いてると右腕がだんだん痛くなることのご相談でした。
楽器を吹いていない素の状態では何ともないとのことだったので、とりあえず吹いてもらいます。
しばらくパラパラと鳴らしてもらって、どうでしたか?と聞くと、痛みが出ていました。
その間、5分と経ってなかったので楽器を吹くための動作と腕の痛みがかなり直結してるらしいことが分かります。
解剖学的構造を考えながら、少しずつ違うやり方を試してもらって痛みが出ない腕の上げ方があることは分かりました。
ただ、鍼を使って体の状態を変えてしまうことで演奏のやり方のことをそんなに考えなくても痛みが出なくなるかも知れません。
そこで、主に背骨と肩甲骨のツボを使った施術をして、終わった後でもう1度楽器を吹いてもらいました。
「最初は良かったけども、やはりだんだんと痛みが出てきました」
どうも演奏のために楽器を持つという考えそのものに何らかの痛みにつながる動きの指示が含まれていて、体がその考えに則して働いた時に痛みが出るようです。
体の状態だけが原因で痛みが出てたとしたら、もっと鍼の効きが良かったでしょう。
「考え」と言っても、もちろん自分で痛くなりたくてやってるのではなく、知らずにやっちゃってることです。
発想を変えて、別の思考ルートをたどって楽器を持つ方法づくりに作戦変更します。
楽器を左手に持っておいて、手ぶらの右腕をただ上げてもらいます。
次に、部屋の向こう側の壁を手で押すと思って右腕を上げてもらいます。
両方とも見た目はほとんど変わりませんが、中身の筋肉の働き方はまるで別物になっています。
この違いをまず認識してもらいます。
次に楽器は最初左手で持っておいて、右手は向こうの壁を押すつもりで上げてから肘を曲げて楽器を持ち、それから普通の構えまでもっていきます。
これで吹いてもらったら右腕の痛みは起こりませんでした。
一度崩してもらって、練習としてもう1度やってもらっても痛くなりません。
長く吹いたら難しいかも知れませんが、今のところこれで痛みにつながる動作のプログラムは回避できるようです。
実際には体幹の支えとか、ブレスの取り方・息の吐き方とか、様々な要因が絡んでいるので、この効果も当面のものかも知れません。
そうした他の要因についても時間の許す限りアイデアをお伝えしたので、自分でいろいろ試してみて良い方向に向かっていただけたらなあと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師