意外と新しい?伝統医学
こんにちは!ハリ弟子です。
鍼灸は伝統医学の1つです。
伝統というと、とにかく古くから受け継がれてきたような印象があります。
本当にそうかどうか、検証してみました。
日本の鍼灸
江戸時代までは、将軍の治療をするなど公的にも認められていましたが、明治政府になって西洋医学が採用されたことでかなり衰退します。
そして、大正8年(1919年)、国は300以上あったツボを120に減らします。
こうした動向に危機感を覚えて、今いちど中国の古典を学び、しっかりとした理論に基づいた伝統的治療の体系を確立しようという動きが、当時の鍼灸師の中に起こります。
現代の日本の鍼灸のスタイルはだいたいこのあたりに起源が求められます。
そう考えると、約100年くらいの歴史があると言えそうです。
もちろん、鍼灸の日本への伝来そのものは6世紀頃までさかのぼれます。
それ自体は長い歴史があることは論を待ちません。
しかし、現代の鍼灸師までつらなる歴史的連続性という意味では、明治になって一度途絶えて、そこから復興してきたここ100年くらいとするのが妥当と考えます。
中医学
鍼灸発祥の地である中国ですが、清朝末期の近代化政策で西洋医学の受け入れが進むのと裏腹に、鍼灸などの伝統医学はマイナーな位置づけにされていきます。
さらに、1912年に成立する中華民国にいたると、鍼灸や生薬の廃止が布告されます。
この後、現在の中国である中華人民共和国が建国される1949年まで、伝統医学にとって非常に困難な時代が続きます。
中国共産党は、国共内戦の中で民間の伝統医学の力を借りて兵士の治療をしたといいます。
建国後もその価値を高く評価して、国家の正式医学として採用しました。
しかし、清朝末期からの混乱で伝統医学の担い手は各地に散っており、もはや体系的な形では残されていませんでした。
そこで、特に文化大革命(1966年~1977年)以降、各地に残存していた伝統医学と古典を整理、採用、統一して新たな医学として体系化しました。
それが現代の中医学です。
50年~60年くらいの歴史と考えるのが妥当でしょう。
もちろん、ベースとしている古典自体は2000年以上さかのぼるものもありますが、日本の鍼灸と同様、理論体系の継承が一度絶たれて、後から再構築した歴史があります。
現代の中医師にいたる連続性という意味で、50年~60年くらいとします。
現代西洋医学
一応、公平を期すために、、
現代の西洋医学につながる医学はどこから始まるか、なかなか難しい問題です。
もともとのヨーロッパの医学がどんなものだったかというと、ほぼユーナーニー医学です。
ユーナーニーとは、アラビア語で「ギリシャの」という意味です。
医学を含め、古代ギリシャ、ローマの科学はイスラム世界に吸収され、アラビア語に翻訳されて発展します。
だからアラビア語でかつ「ギリシャの」医学なのです。
ユーナーニ―医学は、イスラム文化圏の拡がりとともにインドなどにも伝わり、ヨーロッパにも逆輸入されます。
イスラムの医者イブン・スィーナーがアラビア語で著した『医学典範』がラテン語に翻訳されて、ヨーロッパ各地の医学部で教科書として使われていたのは有名な話です。
こうしてヨーロッパに里帰りする古代ギリシャ、ローマの医学ですが、現代の西洋医学はこれとは別物です。
仮に、現代西洋医学の起源をギリシャ、ローマの古典的医書をうのみにせず、実証的に再検討し始めた時とすれば、ヴェサリウスがガレノスの解剖学を批判した16世紀になります。
あるいは、ユーナーニ―医学における主要理論であった四体液説が、ウィルヒョウによって否定されたところからとすると、19世紀以降となります(ちなみにユーナーニー医学は、ハーブやアロマなどの形で今でもその痕跡がヨーロッパ伝統医学に残っています)。
他に、麻酔と消毒の技術が確立されて外科手術が可能になった時期とか、細菌学の成立、抗生物質の開発とか、現代西洋医学で何をイメージするかでいろいろあるかと思います。
いずれにせよ、短くとって100年~200年、長くとって400年~500年といったところでしょうか。
にゃ、にゃんと、、現代西洋医学の方が歴史が長いのか!?
そして、、伝統医学は意外と新しい??
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師