鍼灸は意外と養生には向かない?
「3回以上来院してくれるのはせいぜい2割程度です。」
鍼灸学校の先生に言われた言葉です。
伝統的ないわゆる”気”を整える鍼灸を標榜している、全国でも最大規模の鍼灸師団体における大御所の先生の数字としてそう言われました。
この数字をどう考えたら良いか・・・
純粋に治療であれば優秀な成績です。
8割は2回以下で良くなったわけですから。
ただ先生のニュアンスは違ったように思います。
鍼灸を養生に役立てる考え方があります。
病気を未然に防ぐために日常的に健康に良いことをしましょう、体に悪いことはやめていきましょう、ということです。
伝統療法の世界には根強い思想です。
僕も開業してしばらくはそう思っていて治療と養生があいまいなまま施術していました。
そんな時、ある患者さんが去り際にこう言いました。
「鍼灸は痛みには効くって聞いたんですがね。」
僕の鍼はその時その方の痛みにはまったく効かなくて、その方は2度と来ていません。
脈をみておだやかになったのを確認し、施術後の体全体のトーンも一段落ち着いてましたから、養生としては有りだったと思います。
でもその方の求めは、今すぐこの痛みをなくして(ないしは軽減して)欲しい、だったのですね。
このことから治療と養生は異なるニーズであり、また鍼灸師が思ってるほど人は鍼灸に養生を求めていないと思うようになりました。
養生という言葉で思い浮かべるのは、簡便で日々取り組むことのできる健康法です。
1回1回の効果を見るよりは、継続的に数か月~数年と続けてみてはじめて効果を実感するようなもの。
たとえばヨガとか太極拳とか、あるいは走りに行くとか・・・
簡便で日々取り組めることを考えるとそこにかけられるコストは自ずと決まってきます。
僕のかみさんがヨガの先生なので聞いてみると、もっとも安価なヨガ教室は1回5百円程度からあるそうです。
極端な例では参加者50人に90分指導して全部で8千円とか(1人当たり160円!)。
鍼灸の料金は東京都内ならだいたい6千円前後です。
もし本気で養生目的でやるなら、1人数百円でやりますか?やっていけますか?というお話しです。
また逆に自分が6千円払うとしてそれで効果がよく分からなかったら納得しますか?というお話しです。
こう考えてからは僕の肚も決まり、施術では明確に効くと分かってる技術しか使わないことにしました。
初回施術が1万円とやや高めなのは1回で相当な効果を出す覚悟のあらわれですし、理想的には2回目以降はない方がいいのですが、かかってしまった場合には都内の相場程度(6千円)ということにしています。
不思議なもので一度効いた体験をしていただくと、その後は月1~2回程度、メンテナンス目的でいらしてくださる方が増えました。
ごく私的な考えではありますが今のところの結論はこうです。
鍼灸師は最初から養生を目指してはいけない!
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師