灸師、多くを語らず
「お灸の人は下手に理論をこねず実際に効いたことをたんたんと記す」
以前、お世話になった先生が言ってたことです。
「鍼の人で困るのは理論的に正しいってだけで効かないのに効くって書いちゃうところ」とも。
昔はお灸しかやらない鍼灸師もけっこういたようです(今でも少数派ですがいます)。
鍼灸師の間では鍼が上でお灸は格下と思ってる人が多いですが、僕は鍼より灸の方が数段難しいと思ってます。
火が燃え尽きるまでの短い間に決めるべきことを決める、瞬間芸なんですね。
というわけで、お灸で治せる人には無条件のレスペクトを持っています。
先日、医道の日本社の『名人たちの経絡治療座談会』という本を読んでいて、意外な人がお灸中心だったことを知りました。
澤田 健。
明治から昭和初期にかけて活躍した名人です。
本によると鍼の免状が取れなかったのでお灸しかできなかったそうです。
一方でお弟子の代田文誌が書いた『鍼灸真髄』では、澤田健の治療記録として鍼を使った内容も残されています。
昔のことなので免許がなくても実際には鍼もしていて、かつ上手かったのかも知れません。
『名人たちの経絡治療座談会』の中では澤田健はお灸中心だったので経絡を治療に使う段階まで進めなかったように言われています。
背景には鍼を使って治療するには経絡を使うのが一番との考えが見え隠れします。
こと竹山晋一郎にいたってはマルクス主義の唯物論的発展段階説に立って、当時の自分たちの立ち位置が最先端で正しいと信じて疑ってないように見えます。
経絡使って治療してる人にとっても爆弾なんじゃないかしら、この本。
よくこれを経絡治療学会が復刻したと思います。
ちょっと脱線しました。
「お灸の人は下手に理論をこねず実際に効いたことをたんたんと記す」
澤田健が仮にお灸だけの人だったとしても「なるほど、だからか」と僕は思います。
書かれてることはどうやら信頼して良さそうです。
いや、本人は書いてないけど。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師