顎関節と指の不調に同じ足のツボが効いて考えたこと
最近ちょっと興味深い患者さんが続きました。
1人は木管楽器の方で指が痛くなってしまう症状。
なぜ痛くなるかというと楽器をつかむときに、いわゆる第1関節(DIP関節)が中折れして、指を曲げる力がすべて過伸展した第1関節にかかるからでした。
楽器を把持するために第1関節の伸展の限界を超える力で押し続けていて、その状態で運指するわけですからそれは痛いわけです。
形としてはボタン穴変形と言われるものに似ていますが、それとは別物で、楽器をかまえるときだけこの形になります。
本人としてはやりたくてそうしてるのではなくそうなっちゃう類のものです。
なので「指先にもっと力入れたら」というアドバイスはまったく効果がありません。
指先がなにかに触れたときに接触面をずらさずに力をかける方向を一定に保つ、そのようなコンタクトタスクの解決法が一時的に機能しなくなった状態で、広い意味で運動障害のようなものではないかと思います。
もう1人は金管奏者の方で、タンギングの際に顎が閉じてしまう症状。
舌をつくたびに前歯が閉じて息をさえぎるのでそれは吹きにくいです。
会話では問題なく、楽器を吹くときにだけこの現象が起こります。
もちろんこの方もそうしたいわけではなくそうなっちゃう類のもの。
しばらく続けると顎関節のあたりが疲労し切ってしまうそうです。
整動鍼では指や顎それぞれの動きに対応するツボがあります。
なので木管楽器の方には指に関連したツボを、金管の方には顎関節に関連したツボをまずは使いました。
もちろんそれも効果がありました。
でもこのとき一番効果があったツボは実はそこではありませんでした。
施術では1つ鍼をするたびに実際に演奏してもらって具合を確かめます。
だからどのツボでどう変化したかが分かります。
指や顎に対応したツボである程度の効果を得てさらに全身の協調を図ろうとした際、この2人に共通した体の状態として肩に硬い筋張りがあるのに気づきました。
で、この筋張りに対応した足のツボを使ったときがもっとも変化が大きいように僕には見えたのです。
指と顎というまるで別の症状にも関わらず。
ツボの効果にはもしかしたら階層性があって、この2人の場合には足のツボの方がより本質的に動きの協調を図るものだったのかも知れません。
これまでにも指や顎の症状で、ただ、肩の筋張りはそれほどでない方に同じ足のツボを使ったことがありますが、ここまでの効果はありませんでした。
だとすれば、肩の筋張り + 何かの症状の場合には肩の筋張りが優先するのか。
あるいは、やっぱり最初のツボによる効果が実は大きくて、試し吹きするたびに体の変化に慣れてうまくなっただけか。
次回同じような方がいらしたときに足のツボから使ってみれば分かりますね。
僕が運用している整動鍼のツボはまだ50穴程度。
この少なさでも運用法を駆使することでいろんな工夫をできるのが整動鍼の面白いところです。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師