鍼灸の講習会で質問したら怒られた
こんにちは!ハリ弟子です。
ハリ弟子が卒業した鍼灸学校で先生から言われたことでよく覚えていることがあります。
「古典や本で読んだことを鵜呑みにせず、自分でやってみてどうだったか、その体験を一番信頼してください。」
鍼灸は医療技術です。
技術というからには(100%と言わないまでも)再現性が必要です。
しかも毎回別の患者さんに施術するので、管理されたラボでの実験と違い、初期条件が全部違うところで再現性を追求する科学です。
当然、自分1人の体験では数が少ないので、鍼灸師同士、実際にやってみた人に話を聞くことで補うということを意識的にやっています。
教えてもらうばかりではだめなので、こちらの体験も聞かれれば成功も失敗も話すようにしています。
役立てるかどうかは相手が判断してくれればそれでいいです。
ハリ弟子にとってはそれが普通でした。
だいぶ前にある古典鍼灸系の講習会に参加しました。
ある経絡(けいらく)を使ってどんな病気が治せるか、そんなことを勉強していた時だったと思います。
「先生の体験でその経絡を使って治した病気があったらその治療の話をお聞きしたいのですが」
というような質問をしたら、講師の先生が半分キレてしまいました。
ハリ弟子はもうかなりおっさんなのでキレられても冷静にその相手を眺めていましたが、まわりの若い鍼灸師が引いていました。
ハリ弟子がなぜその質問をしたかというとこういうことです。
古典に書いてあることを抽出して理論化するのはそれはそれでいいのですが、実際にその意図で使ってみてうまく行かなければ意味がありません。
ちなみにハリ弟子はその時点ではその意図で使ってみてうまく行った体験がありませんでした。
でも、うまく行った人の体験を聞くだけで腑に落ちることってけっこうあります。
だから聞いてみたのです。
別に鍼灸だけではありません。
およそ人を相手にする職業では相手の存在ぬきに理論だけで「正しく」やるのはそもそも不可能なのです。
病院の医師に「もう治ってるはずなんだけど、、」と言われたことはないでしょうか?
音楽理論的に「正しい」演奏をすれば聴衆は感動してくれるでしょうか?
アレクサンダー・テクニーク教師に手でさんざんガイドされて弾いてみたけど、うまく演奏できなかったとか(汗)。
ハリ弟子も鍼灸の古典は好きです。
しかし研究者ではないので、さすがに二千年前の古い中国語を読むのにそんなに時間と労力をさくことはできません。
余裕があればもちろんやってみたいですが。
この講習会でハリ弟子が学んだことは、古典は臨床体験から意味を問い直している方からその読み方を教えていただくのが実際の役にも立つし、読みも深まるらしいということでした。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師