枇杷の葉温灸
道具によって効能が異なる。
そんな当たり前のことに今さらのように気づきます。
3年ほど前に一時取り組んでいた枇杷の葉温灸を再開して2週間。
再開の理由はアトピー性皮膚炎の方からご相談いただいたからです(詳しいいきさつはこちらで >>コロナの時代の鍼灸院のあり方~地元のお客さんがいらして考えたこと)。
もともと体にアトピーの湿疹があったのが、今年は新型コロナの外出自粛のせいか顔にまで湿疹が広がってしまったのでした。
「枇杷の葉温灸で」と決め打ちのご要望に素直にしたがってみたら、初回の施術から3日後くらいに「きれいに肌が回復してきている」とご連絡いただいてこちらがびっくりしました。
皮膚科疾患には鍼灸は分が悪いと思っていたので。
鍼は皮膚の張りやむくみには即効性が期待できます(だから美容鍼などに応用されるわけです)。
ところが皮膚そのものの性質が変化しているもの、たとえば湿疹、乾癬、(慢性的炎症から)硬く黒ずんでいたりすると(個人的な印象では)大変に難しいです。
鍼によるアトピーの治療例を検索すると多くが長期間の通院であることが分かります。
鍼の効きやすさは筋・骨格系 > 胃腸・内臓系 > 皮膚科系という感じ。
筋肉の緊張をゆるめることで、胃腸や内臓の症状が寛解し、最終的に皮膚症状がきれいになっていくという順番があるように思います。
順番がめぐるまでどうしても時間がかかるのでしょう。
他方で枇杷の葉温灸は葉っぱを肌に直接当てます。
その上から太い棒灸で熱を入れるので皮膚症状の変化が早いのかも知れません。
また棒灸の使い方にも秘訣がありそうです。
棒灸から出る煙には精油成分が含まれ、先端は押し当てていると硬く炭化しながら燃えます。
炭の燃焼って煙を出さずに熱だけ出しますよね。
先端が炭で中の方は火炎で煙を出す、そんなバランスで燃えるともぐさの精油成分と熱の両方が効かせられそうです。
逆に鍼に得意なところも浮き彫りになってきました。
葉を当てる前に必ず腹部の硬結を確認しますが、局所的な硬結は枇杷の葉温灸ではどうも取り切りません。
こういうところは整動鍼の手足のツボに鍼をしたらきれいにやわらかくなりました。
なので今は下痢・便秘、生理痛などお腹の症状を聞き取って鍼で対処しながら枇杷の葉温灸をしています。
体の内と外と両方からアプローチすることでより早く効果が出るのではと考えています。
とはいえまだまだ症例が少ないです。
そこで以前から来ている患者さんでアトピーの方に枇杷の葉温灸をさせてもらったり、がんや前立腺などの症状の方にも枇杷の葉温灸を使い始めました。
今のところみなさん副作用はなく、なにがしか楽になる要素があるようです。
鍼と違って即座の変化が期待できない領域ですが、1~2週間での変化を確認しながらこの療法の使いどころを見極めようと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師