コントラバス指板の功罪
こんにちは!ハリ弟子です。
ずいぶんと遅い季節に台風がやってきたと思ったら、翌日は木枯らし一号。
とってもおかしな今年の気候ですが、ようやく順調に秋から冬に向かっていく気配ですね。
ハリ弟子も風邪などひかぬよう、寒さ対策を万全にしていきたいと思います。
さて、先日、胡弓を演奏される方とお話しする機会があり、指板の話になりました。
まず、「指板」という言葉が通じず、胡弓では「棹」と言うそうです。
見せていただいたのは和楽器の胡弓で、駒に近くなると弦高がかなりあります。
「押弦が大変じゃないですか?」と聞いたら、
「いえ、駒の近くでは棹につくまでは押さえませんので、、」
和楽器の胡弓では、糸巻に近い方は棹につくまで弦を押さえるそうですが、駒の近くではそんなに押さえなくても音程がとれるそうです。
それどころか、中国の二胡では、まるっきり棹につけないで音程をとる仕組みだそうです。
動画で確認してみました。
2分辺りから、少しずつ押弦してどのくらいで音程がとれるか実演しています。
確かに、、この弦高では棹につけようがありません。
以前、ニッケルハルパというスウェーデンの民族楽器を見て、コントラバスの弦をどのくらい押すと音程が変わるか実験したことがあります。
その時のブログ記事がこちらです。
コントラバスの場合、結局は指板付近まで押し込んであげないときちんとした音程がとれないことが分かったのでした。
二胡の押弦を見ていると、押弦とは、弾いている弦の弓でこすっている側の振動が指で押さえているところより上に伝わらないようにすることであると定義できそうです。
仮に二胡のような構造のコントラバスを作ったとして、指で押さえるだけで音程をとろうとしたら、普通の楽器の弦高以上に深く押し込んであげないと音程がとれないような気がします。
そうだとすると、指板と指で弦をはさむことで、より少ない量の押弦で、弾いている弦の振動を上に伝わらないようにしているのではないでしょうか。
つまり、押弦の省力化であり、これこそが指板の役割ではないか。
ここまでの理屈が正しいとすれば、これは功罪の功の部分です。
逆に罪は何でしょう?
二胡の場合、動画にあるように、空中に浮いた状態で弦を押さえますので、押弦に必要な力加減がどのくらいか習得することが楽器の構造上必須です。
コントラバスの場合、音程が変わる前に指板に接してしまうので、音程をとるためには指板に接した程度でいいのか、接してからさらに圧を加えた方がいいのか、その圧がどの程度必要なのか、押弦に最低限必要な力加減があることに気がつきにくいです。
そこで何が起こるかと言うと、弦が指板に当たってからも、あらん限りの力で押さえ続けて指を痛めてしまうことです。
これをハリ弟子はよくやっておりました。
それはそうです。
指板に接したら、それ以上押せるはずがないのですから。
本来、指板はより少ない力で音程をとれるようにするものだとしたら、指板にとって何とも悲しい皮肉な話です。
弦が指板に接したら、弾いている弦の振動を指より上に伝わらないようにする程度の力加減がどのくらいなのか、あらためて意識してみたいと思います。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師