関節のゆるい子が前ならえで身につけてしまったこと
実はこれ僕自身のことです。
人には生まれつき関節ががっちりした人とゆるい人がいるらしく、僕はふだん何もしてなくても後ろ手で合掌したり足が頭まで上がったりします。
関節包とか靭帯が人より少しあそびがあるのでしょう。
整形とか整骨院に行くと肘や肩をぐっとつかまれて「ゆるゆるですね」とよく言われます。
良く言えば「やわらかい」ですがいいことばかりではないようで、これはそういう人が前ならえで腕を上げ続けた時にどうなったかというお話です。
僕が小学生のころはみんなが集まる場面で必ず前ならえをして整列していました。
もしかして知らない人もいるかもなので念のため説明すると、整列の時こうやって腕を前に伸ばして前の人との間隔をそろえるものです。
これだけなら自分と前の人の間隔さえとれれば腕を下ろせばいい、簡単なことです。
でもそこは昭和の学校、全員がきれいにそろうまで腕を下ろしちゃいけないルールでした。
全校で確か2000から3000名くらいいたと思います(途中で分離して減りましたがそれでも1000名以上いたと思う)。
この全員がそろったと先生が見なすまでにどれだけかかるでしょう?
まあ、、かなりです。
だから朝礼とかみんなが集まるイベントがあると腕が疲れるのが嫌でしかたありませんでした。
そんなある時、本当に嫌になって肩の力を抜いてみました。
そしたら肩が外れて関節ではないところにカポっとはまって固定されることに気づきました。
固定されるので腕は落ちません。
はたから見たらちゃんと前ならえしてるように見えます。
こりゃ楽だわ~と思ってそれ以来そうすることにしました。
今にして思うに、上腕骨を肩甲骨につなぎとめておくローテーター・カフ(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)が脱力して、腕が靭帯でぶらさがるような状態でした。
鎖骨と肩甲骨をがっちり背骨や肋骨の方に固めておけば腕が落ちることはありません。
筋肉がまだ発達していない子供なので、肩や腕より体幹に近い大きな筋肉を使った方が疲れないと感じたのでしょう。
ともかくも腕を支えるのにローテーター・カフをあまり使わない変なやり方を身につけてしまいました。
このことで日常生活で不都合に感じることはありません。
しかしコントラバスを弾く上ではかなり手こずる問題となりました。
先生から「もっと腕の力を抜いて」とよく言われます。
実際には腕の力は抜けているのですが、鎖骨・肩甲骨をがっつり背骨や肋骨の方に固めていて動きが固く見えるのです。
ならそっちの力を抜けばいいのですが、抜いてしまうと肩が外れそうになって演奏どころでありません。
力の入れ場所やタイミングに注意を払いつつ、むしろ力を使った時に「今のでいい!」となります。
だいぶマシになってきましたが、まだどうやってるのかつかみ切れておらず取り組んでいる課題です。
関節が普通にはまっていれば物理的に骨格が支持されて力を伝えることができますが、ゆるい人は意図的に制御しないと同じことができません。
体の中ではたらかせているプログラムは人それぞれさまざまに違うわけです。
特に教える立場になった時、僕は自分の体験からそういうことを考えるようになりました。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師