昭和の鍼灸師と同じ患者さんはもう来ない
こんにちは!ハリ弟子です。
仕事柄、昭和に活躍した鍼灸師の本をよく読みます。
使ったツボや治療の考え方など勉強になるからです。
と同時にそこで扱われている病気の種類にとまどうことも少なくありません。
たとえば、結核。
昔は薬がなかったので、お灸による治療が多く行われていて実際それで治った人たちがいました。
現在は抗生物質で治すので、鍼灸の治療院に来る患者はゼロです。
これはちょっと極端な例ですが、ここ100年くらいの西洋医学の進歩は目覚ましいです。
かつては対処しようがなかった病気や症状で、現在は薬などできれいに取り去ることができるようになったものが数多くあります。
ということは鍼灸の先人が扱ってきた病気の多くが、今では病院で対応できるということです。
つまり我々が先人と同じ病気の人を相手にしようとしたらだめです。
だって、1回数千円かかる自由診療の鍼灸と1回数百円の保険診療の病院、同じ病気ならどっちに行くか明らかですから。
となると現在の鍼灸は誰を相手にしたら良いのでしょう?
条件さえ整えば、病院医療より総体のコストが安い分野があるかも知れません。
たとえば痛みのコントロールの分野で鎮痛剤と置き換えるなど。
保険診療は安く見えますが実際には補助金で埋め合わせしているので総体コストは鍼灸の自由診療の料金とそんなに変わりません。
薬の成分の多くは体内で代謝された後で尿や便として排泄されますが、その成分は下水処理場でも除去できず河川や海に流れます。
そうした医薬品による環境負荷はまだよく分かっておらず、農畜産物や魚介類への蓄積、そしてそれをまた食べる人間への健康リスクが問題視され始めています。
鍼灸の鍼は金属資源として再利用されるルートもあるので、こうした環境負荷まで考慮した上で低コストと判断されれば、投薬に変わる可能性はあるでしょう。
ただしこれは薬と同等の効果があることが証明されるのが前提です。
「条件さえ整えば」というのはそういう意味です。
長くなったので続きはまた今度。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師