背中のツボでフルートの左手親指のトリルを改善
こんにちは!ハリ弟子です。
今日は鍼灸の興味深い症例をご紹介します。
頚椎ヘルニアと診断されたアマチュアのフルート奏者の方がいらっしゃいました。
左手のしびれや動きにくさなどの症状があり、フルート演奏との関係では特に左手の親指によるキー操作、またテレビなどのリモコン操作にも支障がありました。
実際にやって見せていただくとこのように第1関節が伸び切って第2関節が曲がったまま、母指球の付け根の関節も固定したまま動かせないような状態でした。
ちなみにこの写真は患者さんの手ではなく、ハリ弟子が自分の手で再現したものです。
施術前にフルートもかまえていただきましたが、親指が同じ形になってしまい、管体の裏側のキー操作が難しくトリルはほとんど不可能な状況でした。
興味深いのは楽器やリモコンを持たずに指だけで動かしてもらうと、動き自体はできることです。
物を把持することで何らかのロックがかかるのか、あるいはボタンやキーなどのターゲットに指を届かせようとする運動のコンセプトに何かあるのか、よく分かりませんが楽器やリモコンになると意図したように親指が動かないのは確かでした。
またこのこととの関係は不明ながら左手の後渓(こうけい)というツボに著明な圧痛がありました。
症状的には動作特異性かつ指を巻き込む動きに見えなくもないので、ご本人はディストニアだったらどうしようと心配されていましたが、かかりつけの医師の意見は否定的とのこと。
よく分からないながら、肩甲骨と上部胸椎の可動性を改善する意図で背中のツボにいくつか鍼を入れて、再度、後渓の圧痛を確認したところ、かなり痛みが減っていて左手がボワーと温かくなってきたそうです。
この間多分1分もしていないと思いますが、体って不思議ですね。
完全に施術を終えてからもう1度リモコンを持っていただいた様子はこんな感じでした。
曲げられる関節が増えました。
ちなみにこの写真も患者さんの手ではなく、ハリ弟子が自分の手で再現したものです(念のため)。
フルートも吹いていただきましたが、左親指のトリルが容易にできるようになっていました。
長く続けるとちょっと動きが固まってくる気配があるとのことでしたが、施術前のことを考えればすごい変化で、患者さんもハリ弟子もびっくりです。
この経験から分かることは、頚椎ヘルニアがあっても腕や手の症状がすべてそれだけで起こっているのはなさそうだということです。
また、ディストニアっぽく見えるような動きがたった1回、1時間程度の鍼灸施術でかなり改善したということは別の理由からそういう動きになっていたと考えられ、やはり素人判断はひかえた方が良さそうだなあということもあります。
この点、医師が否定的だったのはおそらく正しいと思われます。
では何だったのか?というと、アレクサンダー・テクニークで培った観察力で見る限り、背中から肩甲骨、腕、手にかけての筋肉のテンションバランスが大幅に変わり、これにともなって上半身から腕、手指の動かし方が変わったのは分かりますが、ピンポイントで親指の関節が固まる、動くの閾値をどこで越えたのかまでは分かりません。
効いたツボが特定できればもう少し解明のしようがありますが、実は左手以外にもいくつかヘルニア由来と思われる症状があり、そちらにも対応した鍼をしたので、正直どのツボがどのように奏功したのかあまり明確にはできませんでした。
もちろん施術の効果には個人差があります。
でも医術としては再現性があるに越したことはありません。
もやもやした中にも3つくらい気になっているツボはあるので、今後の課題としてまた再チャレンジしたいと思います。
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2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師