呼吸しやすい姿勢、呼吸しづらい姿勢
こんにちは!ハリ弟子です。
理学療法の分野で姿勢と呼吸の関係を論じた研究がありましたのでご紹介します。
管楽器のブレスにも参考になると思います。
市川 毅 他『立位姿勢の違いが呼吸筋活動、胸郭運動および呼吸機能に及ぼす影響』(臨床理学療法研究 巻26, 2009)
背骨の胸椎部分と肋骨と胸骨でかこまれた部分を胸郭(きょうかく)と言います。
研究では胸郭を骨盤より後ろにした立ち姿勢(図の赤い矢印)と、胸郭を骨盤の真上にした立ち姿勢(図の青い矢印)とで呼吸運動を比較したそうです。
呼吸運動は肺活量と胸囲、いくつかの筋肉の筋電図を計測することで数値化し比較しています。
その結果、胸郭を骨盤より後ろにした姿勢の方が肺活量、胸囲ともに低くなりました。
胸郭を骨盤より後ろにした立ち姿勢で思い浮かぶのは「気をつけ」「前ならえ」です。
やはり「気をつけ」的な姿勢で腰や背中を反ってしまうと呼吸には不利なんですね。
また「前ならえ」で手を前に出すのとセットで腰や背中を反ることが多いですが、楽器を構えようと手を前に出す時も同じことが言えます。
これもまた呼吸には不利ということになります。
安静時であればどんな姿勢をしていても息が苦しいことはないでしょう。
しかし楽器を吹くためにはできるだけ呼吸に有利な姿勢をこころがけたいものです。
胸郭を骨盤より後ろにした姿勢では立っている姿勢の維持だけでより多くの筋肉が使われて、肋骨の動きが制約されます。
アレクサンダー・テクニークでは頭、背骨、骨盤の関係を最適化して最小限の力で姿勢を維持できるようにします。
そうすることで肋骨まわりの筋肉を姿勢維持に使う必要がなくなり、息の出し入れがしやすくなります。
また研究ではそこまで言及していませんが、鎖骨、肩甲骨まわりの筋肉も姿勢維持に使う必要がなくなるので手も動かしやすくなり、複雑で速い運指もやりやすくなるでしょう。
頭、背骨、骨盤は姿勢、肋骨は呼吸、鎖骨、肩甲骨から腕は楽器を持つのと指まわしのために、それぞれの役割がやりやすくなるように全体を調和させたいですね。
2016年、東京都練馬区の江古田にて音楽家専門の鍼灸治療院を始める。
2021年、東京都品川区の鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」に移籍。音楽家専門の鍼灸を開拓し続ける。
はり師|きゅう師|アレクサンダー・テクニーク教師