フォーカル・ジストニア
こんな症状がある方に
以前は意識せずにできていたことが以下のような症状とともにできなくなってしまった。
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弾いていると指が勝手に曲がってしまう、あるいは伸びてしまう
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力の入れ具合が分からなくてアンブシュアがうまく作れない
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舌が硬直してタンギングができない、あるいは音がきつくなる
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無意識に顎に力が入って噛んでしまう
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喉がしめつけられるような感じがして声がしゃがれたり途切れたりする
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筋肉が勝手に緊張してコントロールが効かない
フォーカル・ジストニアとはなにか
ジストニアは「筋肉の緊張の異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる」疾患です(≫ 脳神経外科疾患情報ページ)。
全身の筋肉に生じる場合とある特定の筋肉(または筋肉群)に起こる場合があり、後者を局所性ジストニア(=フォーカル・ジストニア)、さらにある特定の決まった動作でのみ症状が出るものを動作特異性ジストニアと呼びます。
音楽家が演奏との関連で発症するジストニアの多くはこの「局所性(フォーカル)」「動作特異性」であり、意図しない筋肉の異常な緊張により演奏に支障をきたします。具体的には指や手首が曲がったままあるいは伸びたままこわばる、アンブシュアやタンギングがコントロールできない、喉がしめつけられて発声困難になるなどです。ドラマーでは足に症状が出ることもあります。
いずれも以前は簡単にできていたことがこのような症状でできなくなってしまいます。思い当たるきっかけがある場合もない場合もあり、痛みの有無もケースバイケースです。また当初は楽器演奏でだけ症状が出ていたのが、次第に日常生活でもあらわれるようになり、それが常態化するケースもあります。
なおアンブシュアやタンギングのジストニアについてはこちらのページ(≫ アンブシュア・舌の違和感)も参考になります。ぜひお読みください。
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フォーカル・ジストニアの原因
分かっていません。
脳内の運動に関係する部位の機能障害と考えられていますが未解明です。
病院での診断と治療法
病院の診断
通常、診断するためには症状を確認する必要がありますが、院内で楽器を演奏できるところはあまりありません。そのため楽器演奏でしか症状が出ない人の場合、問診だけで判断されることもあるようです。
また病院ではフォーカル・ジストニアと同じ症状の出る他の疾患の可能性も確認します。そのために頭部CT、MRI、脳波をとることもあり、これが病院の強みです。検査の結果、他の疾患の可能性がないことを確認し、なおかつ原因が分からない場合にフォーカル・ジストニアと診断されることが多いようです。
しかしながらフォーカル・ジストニアは診断が難しいと言われており、医師により厳密さが異なる印象があります。しらべにいらした患者さんでも、実際に症状が出るところを確認し検査して原因不明でもフォーカル・ジストニアの疑いと言われた人もいれば、検査なし問診のみでフォーカル・ジストニアと診断された人もいます。
病院の治療
治療法は投薬やボトックス注射、運動療法、脳手術などがあります。
投薬では緊張をやわらげる薬が用いられます。うつ病などに処方されるセルシンや漢方、より強めのアーテンなど。
ボトックスはボツリヌス毒素という一種の神経毒の注射です。この神経毒は筋肉を麻痺させます。緊張する筋肉に直接入れることで症状を緩和することができます。しかし必要なときも麻痺したままになるので演奏しづらいことには変わらないとの意見もあります。
基本的にその人の症状に合わせて薬、注射、運動療法などを1つまたは複数組み合わせることが多いようです。しかし原因が不明なため確立した方法が存在しないのが実態です。
最後に脳手術ですが、症状が楽器演奏以外の場面でも出るようになりしかも痛みをともなうなど生活上の苦痛・支障がある場合に検討されることが多いようです。
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フォーカル・ジストニアに対する鍼灸
そもそも鍼灸は効くのか?
欧州のある調査では鍼による改善率は9.7%でした(『どうして弾けなくなるの?<音楽家のジストニア>の正しい知識のために』音楽之友社)。日本と欧州の違いを考えれば(日本の方が施術者が多く技術水準も高いと思われ)、改善率9.7%という数字はもう少し高めに出るのではないかと考えています。
とは言えフォーカル・ジストニアは個人差が大きな疾患です。1回でおどろくほど改善することもあれば、数か月~年の単位で取り組むこともあります。また残念ながらまったく効果を感じられないこともあるのが実態です。
みもふたもない言い方になりますが、効く人もいれば効かない人もいるとしか言えません。またひとくちに鍼と言ってもさまざまな方法や考え方があり、そのどれが有効なのかも結論が出ていません。他院でうまくいかなかったがしらべで改善したり、他院でいったんなおったと思ったがまた再発してしらべにいらしたということもあります。逆にしらべでうまくいかなかったのが他院で改善していることもあるはずです。しらべが、というより鍼灸界全体の状況として、現在は技術で改善率を引き上げる段階と考えています。
そのため「確実になおるのでなければやらない」という人には鍼は向きません。他方でおどろくほど改善した人がいるのも事実です。しらべでは症例をオープンにするなど事実の提供に努めています。判断の材料にしていただければと思います。
しらべの施術
しらべでは整動鍼を使います。整動鍼は鍼の一手法で、筋肉を調整し動作を改善するのに優れています。
施術ではまず実際の演奏動作をみて症状の出方を確認します。そして症状と関係する筋肉の緊張を特定しそれをゆるめるツボに鍼をします(ツボはたいてい緊張部から離れたところです)。ふたたび演奏してもらって症状に変化があるか、ある場合はどのように変化したかを確認します。このようなプロセスを繰り返して効果を検証します。
経験的に分かっているのは鍼で改善する場合は施術当初からなんらかの効果が感じられることです。
最初の3~5回はいくつかのパターンを試みるために週に1度の施術が必要です。3~5回で効果が認められたら以後は症状に応じて月に1~2回の施術をし、効果の定着と着実な改善をはかります。
逆に最初の3~5回でまったく効果が感じられない場合、それ以上はすすめません(時間的経済的負担になるだけなので)。
また必要に応じてアレクサンダー・テクニークにもとづいたアドバイスをします。鍼をすると体の緊張が減って動きやすくなります。施術後に楽器を演奏することでふだんより良い状態を体感し、それが続いていくよう練習方法などを提案します。なお、このアドバイスは鍼灸の施術料に込みなので料金は変わりません。
フォーカル・ジストニアから回復した演奏家がよくおっしゃるのは「ジストニアがなおったわけではない、その気になればいつでも弾けない状態に戻せるがそちらを選ばないだけ」ということです。この話は、これまで身につけてきたやり方にかえて、新たなやり方を獲得しなおす必要を示唆するように思います。
新しいやり方を獲得するには長い時間がかかるのがふつうです。また練習のしかたによっては代償動作などのリスクを増す可能性もあります。そのため回復に向けた練習は慎重にゆっくりとすすめる必要があり、専門家の視点は有益です。
しらべでは、フォーカル・ジストニアの方が着実に回復へのステップを踏めるよう、鍼とアレクサンダー・テクニーク両方の専門家としてサポートします。
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フォーカル・ジストニアの症例
しらべで実際に施術したフォーカル・ジストニアに関する症例です。一部をご紹介します。
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