左手指に発症したフォーカル・ディストニア(ピアノ奏者)
来院者
女性 50代 ピアノ
期間
2019年6月
症状
10年ほど前から左手の中指を曲げると隣の薬指が伸びてしまうようになった。中指と薬指を同時に曲げようとすると、薬指の2つの指節間関節どちらかが曲がってどちらかが伸びたままで(いわゆる中折れの状態)固まってしまう。病院を受診してフォーカル・ディストニアの診断を受けた。
施術と経過
実際にピアノで演奏動作を確認したところ、見た目からは分かりにくいが本人の感覚としては違和感があるとのことだった。手首や指の動きと関係するツボを触診すると背中に強い緊張が見られた。脊椎のツボに鍼をして再度ピアノを弾いてもらうと、本人の自覚する違和感がかなり減少した。合わせてアレクサンダー・テクニーク的観点から胸椎回旋の動きを練習するよう提案した。
違和感が筋緊張のパターンから生じることはよくある。ピアノ演奏と指の動きに支障を生じる筋緊張パターンがセットで起こるように体が学習していたとすれば、元になっている背中の緊張を鍼で解除することで指が動きやすくなったことのつじつまが合うと考えられる。
フォーカル・ディストニア自体は脳の疾患と考えられており、(もしそれが正しければ)動きの不具合につながる筋緊張を生じるような脳の活動にアプローチしなければならない。しかし同疾患の症状と見なされているものの中には、筋肉の状態を変化させることで一定程度改善するものが含まれているかも知れず、本症例も(長い経過のうちの少なくとも現時点では)その1つと考える。
使用したツボ
玉陽L・R、C7夾脊L、T4夾脊R、T5夾脊R、天髎L