トロンボーンを吹くとき口や舌のコントロールが効かない
症状
トロンボーン奏者。3年前から低音域で音がゆれるようになった。ゆれているのが顎なのか唇なのか舌なのか自分でも判然としない。また吹奏時に舌に力が入る傾向がある。一度専門の見地からみてもらいたく来院。
なお、10年以上前に楽器を構えると唇に力が入って閉じてしまう症状にみまわれたことがある。当時病院を受診したところ「歯列に原因がある」と告げられた。また舌が片側に寄る癖があり、医師から提案されたアダプターの使用と舌の筋トレで回復した。以後、特に不都合なく演奏活動を続けていたが4年前に再び不調になり今度は歯列矯正をした。歯列矯正は昨年完了している。
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来院者
女性
30 代
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期間
2020年3月 -
頻度
1回通院 -
通院回数
1回
施術と経過
管楽器の音は息と振動体(トロンボーンの場合は唇)のバランスで決まる。そのため症状の原因が口まわりの問題なのかブレスの問題なのかまずは整理する必要があった。
触れて確認すると背中にある呼吸と関係するツボに緊張を認めた。肘のツボを使ってこれをゆるめてから楽器を吹いてもらったが症状に変化は見られなかった。この時点でブレスの問題を一応除外してさらに口まわりを確認すると、右の胸鎖乳突筋が張っていて喉の奥に硬い緊張があった。手と足のツボを使ってこれらをゆるめた。施術後に再度楽器を吹いてもらうと症状の完全な消失には至らなかったが「これなら舌の動きをコントロールできそうな気がする」との感想を得た。舌の動きは外からは観察不可能だが、この感想は筋肉のバランスが変化したことの証左と考えた。
後日「施術の2日後ぐらいからなじんできてゆれが減った」との連絡をいただいた。ご本人の分析では「首の右側の力が使えるようになり」「力の集散の均衡ができるようになった」ことで「アンブシュアが落ち着いてきた」とのこと。いったん終了とし、経過や自主トレーニングの方法につき継続して連絡を取り合うこととした。
使用したツボ
まとめ
長年の体の使い方の癖が特定の筋緊張パターンを作ってしまい、練習すればするほどそれを強化してかえって解決から遠ざかることがある。このような場合、鍼の刺激で筋緊張パターンを一度キャンセルすると不調から抜け出すのが容易になる。本例はまさにそのようなケースと考える。