肩痛
来院者
男性 50代 トロンボーン
期間
2019年5月
症状
トロンボーン演奏を職業にしている男性。
健康管理のためにジム通いしていたが4か月前にダンベルで右腕に痛みを生じた。その後、動かすと痛いのでジム通いを休んでいる。
前腕回外してひねると、前腕前面の上半分と肩の後面が痛む。この動作はちょうどトロンボーンを吹くために持ち上げる時と同じで、仕事で楽器を吹く際もいつも気になっている。
また喘息の既往あり。
施術と経過
喘息の既往があることから上部胸椎を触診すると何か所か硬結が認められた。
頚椎から胸椎にかけての動き、首から肩へとつながる筋肉の張りをみて、それらの動きを改善するツボを使用。右の項強に鍼をした直後に前腕にあった痛みが上腕に移動、拡散したので、他のツボも使いつつ残った痛みに対応。
施術後、やや重だるさは残ったものの痛みは軽減。後日「あの後、吹いた時は息がとてもしやすかった。」とメッセージをいただく。
喘息の経験者は咳発作の動作から上部胸椎にその名残が残ってしまう方が多い。上部胸椎は肩甲骨を介して腕の動きと密接な関係があるため、胸椎が動かないことで腕に必要以上の負担をかけてしまうことがある。胸椎は肺を納める胸郭の一部でもあるので、当然、肋骨などの動きも改善し呼吸がしやすいという副産物的効果も得られたと考える。
使用したツボ
項強R、肘髎R、臂臑R、T1夾脊L、T3夾脊R
来院者
男性 20代 チューバ
期間
2019年2月
症状
仕事でチューバとスーザフォンを演奏している。
体力づくりのために筋トレしていて1週間前に腕立てで腕を伸ばした際に右肩をいためた。
もともと慢性的首肩こりがありかなりひどい自覚がある。また、このところスーザフォンを吹く機会が多く、楽器を肩に載せる関係で左肩がガチガチに固まり、何もしていない時も左肩が上がっていることに気づく。
喘息の既往あり。
施術と経過
触診をして痛いのは右肩の巨骨(ここつ)というツボのあたりと確認。
また喘息の既往があることから上部胸椎に沿って触れてみると脊椎近辺の筋肉に顕著に硬さを認めた。
右肩に炎症が起こっているとして、炎症そのものを鍼灸で即座におさめることはできないが、腕の動きと関連する肩以外の関節の動きを現状より改善することで症状を小さくすることは可能と考え、主に側頚部の動き、上部胸椎、肩甲骨の可動性に関わるツボを選んで施術した。
2週間後に別症状で来院した時に症状が寛解したことを確認。
使用したツボ
合谷R、大椎、身柱、神道、L3夾脊
来院者
男性 20代
期間
2017年4月
症状
仕事柄、パソコン作業が多い。
2台のモニターを見ながら、1日中マウスでクリック動作を繰り返していて、斜めの姿勢になることから首から肩にかけて慢性的にコリや痛みがある。
ひどい時は、左側の腰にも痛みが出て、いすから立ち上がると左ももの裏にしびれが走ってしばらく動けない。
施術と経過
首から肩、腰部にかけて非常に強い張りがあり、上腕二頭筋も硬さが抜けない状態にあった。
また、臀部に圧痛があり、もも裏も張っていて、硬いコリがある。
もともと学生時代からスポーツをしていたということで、発達した良い筋肉をしているが、仕事で動かない生活になったために姿勢維持のために骨格を柔らかく使うやり方を体が忘れてしまったように見受けられた。
いすに座っての姿勢維持には脊椎の動きが重要で、仕事の上でモニターと斜めの角度で座ろうとしたら特に回旋がうまく使える必要がある。
回旋の動きは頚椎から胸椎がメインだが、第1、第2胸椎のあたりで動きがやや少なく、かつ硬結があった。
鍼でこの硬結にアプローチしたところ、ものすごく首が軽くなったとのコメントがあった。
マウス操作(あるいはキーボード作業も同様だが)では、机の上でわずかに腕を浮かせている必要がある。
そのため、上腕二頭筋などの腕の筋肉が疲労して、支えきれなくなると、より体幹の肩甲間部を寄せて背中側で腕を支えようとする。
この影響が脊椎の回旋を制限していたために、斜めの姿勢に無理がかかり、首・肩の痛みとして表れていたと考える。
治療で回旋制限を解除すると、体が本来の動きを取り戻して、とたんに痛みも取れたのだろう。
使用したツボ
陶道
来院者
男性 30代 トランペット
期間
2016年12月
症状
数か月前から右肩に違和感があり、右腕を上げづらい状態が続いている。胸鎖関節にごりごりとした違和感があり、ひどい時には腕を肩の高さくらいまでしか上げられず無理に上げようとすると痛む。楽器の構えにも影響があり、左右で高さがずれるので右を肩ごと引き上げるなどして対応しているが、リハーサルが長時間になると背中から腰、ひどいと足にまで痛みが出る。
施術と経過
来院した時点で比較的自由に腕を上げられる状態で(耳の付近まで上げられる)、肩甲上腕関節周囲の痛み、腫れや熱感もなかったため、いわゆる五十肩の可能性は暫定的に除外。そのうえで、楽器をかまえる体勢をとってもらったところ、やはり右肩を上げて左右のバランスを取ろうとする動きが見て取れた。
おそらくであるが、何らかの原因により数か月前に右の胸鎖関節に痛みを生じたのが始まりで、その痛みが出ないようにする代償動作を取るようになった。しばらくそうした動きを継続すると体は自然にその動作を覚えてしまう。ある程度痛みがおさまってその必要性がうすれても代償動作を取り続けてしまうことはよくあり、現在の背中、腰や足の痛みは代償動作によりかえって体を固めてしまった結果の可能性がある。
以上のように考えて、痛みを生じないよう細心の注意をはらいながら繊細に他動運動を行うことで現在の腕の可動性を再認識してもらい、鍼では脊椎と腰部へアプローチして筋肉のこりを解消するよう努めた。
治療後、再度楽器をかまえる動きをとってもらったところ、左右の高さがそろい無理に右肩を上げる動きはなくなった。
使用したツボ
肝兪、腎兪、C7夾脊