管楽器奏者のアンブシュア不調
来院者
男性 40代 ホルン
期間
2019年1月
症状
愛好家のホルン奏者の方。
学生時代から音域によってふるえる傾向があったが、数年前から気になり始め、ウォームアップや長い休みの後の弱音で症状が顕著になった。ふるえるのは首やあごで、ふるえないように力で抑えると首の後ろがかたくなり、肩周りの緊張や慢性的コリにつながっている。
施術と経過
演奏を聴いてみると音自体はふるえていない。しかし、表情筋の使われ方を見るともっと働いても良さそうな筋肉があるように見受けられた(ただしアンブシュアを作る表情筋のバランスは個人差が大きいのでこの時点では必ずしも確証なし)。
施術は表情筋の動きを促すことと首や肩周りの緊張、コリに対処することとした。
施術後、再度演奏してもらうと明らかにふるえは軽減し、本人からも「コントロールが効く感じになった。」との感想を得た。
「ふるえ」が楽器演奏などの特定シーンでのみ起こる場合は、働くべきところが適切に働いていないこととそれを補うために働くべきでないところが過剰に働いていることがよく見られる(必ずしもこうでないケースもまた多いが)。
この時は表情筋の代わりを首やあごがしていて、それがふるえとなって表れていると考え、表情筋に低周波パルス(鍼を通じて微弱な電流を筋肉に流す方法)をかけた。電気刺激を与えることで神経の反応性に働きかけるのが目的である。「コントロールが効く感じ」というのは表情筋がより働きやすくなったことを示唆していると考えられ、これにより首やあごで補う必要がなくなり、ふるえが軽減したと考える。
しかし本来働くべきところやそれを補う動きは一概にどちらがどちらと特定するのが難しいので、ケースバイケースで慎重に見極める必要がある。
使用したツボ
地倉L・R、下関L・R、T3夾脊L、T5夾脊L、肩外兪L・R、陽陵泉L
来院者
男性 30代 チューバ
期間
2019年5月
症状
1年ほど前に慣れない楽器(人から借りたもの)を使って周囲が大音量の中、自分も無理して大きな音を出さなければならない現場があって以来、唇まわりに違和感を生じるようになった。具体的には第4倍音(B♭)から第6倍音(F)あたりのやや高めの音域で音が安定しない。それよりも低い音域と高い音域では特に問題を感じていない。
施術と経過
演奏を見ると特に問題の音域で頬がピクピクとふるえてしまっていた。ふるえが起こるエリアはちょうど口角を引き上げる作用の筋肉があるところだった。触診すると頬骨の下あたりの筋肉がかなり固く硬結を認めた。
演奏に必要な表情筋の作用がうまく働いていないと考えて、該当の表情筋をゆるめ、かつ反応性を高めれば良いと考えた。
施術後、再度吹いてもらうとアンブシュアが安定し「だいぶいい」との感想を得た。
調子を取り戻すための練習方法として、金管楽器の演奏に必要な要素(アンブシュア、表情筋、息:吐く筋肉と吸う筋肉のバランス)をおさらいし、それぞれ1つずつ変化させながら音との関係性を再構築することを提案した。特に息については楽器を吹くために吐くことしか考えていなかったとのことだったので、いわゆる呼気時の吸気的傾向(息を吐きながら吸うための筋肉も働かせ続ける奏法)のやり方を具体的におさらいした。
使用したツボ
四白L・R、大迎L・R