手・手指の痛み
来院者
女性 20代 クラリネット
期間
2019年7月
症状
音大クラリネット科の学生。
数日前に左手小指のキーがすべるようになった。その後、手首、肘、上腕へと痛みがひろがり腕全体が痛い。レジスターキーの操作もやりづらく練習に支障が出ている。
施術と経過
左手の動きを確認すると、手首の屈伸と前腕の回内・回外の可動域が狭くなっていることが分かった。手首を屈曲した状態で特に痛みが誘発され、強いつっぱりにより手背をベッド面につけることができないくらいだった。
触診すると背中の肩甲間部に強い硬結を認めたため、胸椎の可動性を回復する施術をした。施術後は手首の可動性も回復し、痛みなく手背をベッド面につけられるようになった。
後日メールでやりとりしたところ腕の症状については問題になっていないことを確認した。
手指や腕は肩甲骨、鎖骨を介して体幹の骨格と接続している。胸椎の動きが悪くなると肩甲骨の可動性を損ない、結果として末端の手指の動作がやりづらくなるといった症状で表れる。このような場合、症状の出ている手や腕のツボを使っても改善は可能だが、多くの音楽家にとって手は繊細なコントロールをしたいところであり、そこに直接鍼をするのは抵抗がある。この例では手や腕には一切触れず、症状の大元となる胸椎にアプローチすることで解決ができた。
使用したツボ
玉陽L、T1(1.5)R、T3(1.5)L、T5(1.5)L
来院者
女性 30代 ヴァイオリン
期間
2019年4月
症状
プロとして活動するヴァイオリニストの方。
数年前から左右ともに手首と指が痛むようになり、ヴァイオリンを弾くと症状が悪化するので練習時間をセーブしている。
病院では腱鞘炎・関節炎と診断され、耐えられない時は注射で緩和したりセレコックス(消炎・鎮痛剤)を服用して対処している。
他に痛みを感じるほどの首肩こり、腰痛がある。
施術と経過
頚椎を含めて脊椎の近接部位に痛みがあり、触診すると傍脊柱筋の緊張度が高いように見受けられた。また上腕二頭筋や前腕の屈筋、伸筋群も強い張りが認められた。
全身にテンションを少しゆるめるようなツボの選択をするが、手首や指との関連では特に肩甲骨と胸椎のツボを使うこととした。
施術後、首の痛みが消えて上を見上げる動作が楽にできるようになった(術前は痛みで困難だったとの話)。
また手首の痛みも消失。ただし、肩甲間部の痛みが少し残ったのと前腕部が重だるい感じになり今後の課題となった。
使用したツボ
尺沢R、孔最R、C5夾脊L・R、T3夾脊L、T5夾脊L、天髎L・R、膏肓L・R、委中R、飛揚L・R
来院者
女性 40代 フルート
期間
2018年11月
症状
アマチュアでフルートを演奏していて、左手親指が動かしづらく特にトリルで指が固まって動けなくなる。左手親指は他にも開きにくいなどの症状があり、テレビのリモコンやスマホの操作がやりづらい。
痛みやしびれもあり、病院で頚椎ヘルニア、手首TFCCの診断を受けている。右手も痛みやしびれがあるが、動かしにくくて困るのは主に左手。痛みは右肘が特に顕著。
また呼吸時に左肩甲骨下あたりが痛む。
施術と経過
試みにリモコンを左手で持って操作してもらうと、親指の第1関節が伸展、第3関節が動かないまま第2関節だけを動かしていた。他動的にそれぞれの関節を動かしてみると特に痛みなどはなく可動性にも問題は見られなかった。フルートの演奏でもその指の形は変わらず、トリルができない状態だった。
全身の動きに目を向けると特に鎖骨・肩甲骨が動いておらず、腕の動きとの協調をもっとよくする余地があるように見えたので、座位のまま左肩甲骨付近のツボに鍼をしたところ、直後から左手がぼうっと温かくなったとの感想。
再度フルートを吹いてもらうと、さっきできなかったトリルが問題なくできるようになった(ただし長く続けると少し動きが固まってくる感触あり)。親指の第1関節と第3関節も動きに参加し始めているのが見て取れた。
観察を踏まえて、鎖骨・肩甲骨を含めた上肢帯全体の動きを改善し、また全身にやや緊張気味だったのでテンションを落とす方向でのツボを選び、施術した。
施術後、左手親指の動きが改善し、右肘の痛みは肘下前腕の半分くらいまで感じていた痛みが肘までに後退した。
使用したツボ
天髎L、膈兪L、肩中兪R、厥陰兪R、身柱、神道